「介護食」のイメージ覆した 外科医がコラボした相手は
加齢や病気で、食事をのみ込む力は弱ってくる。そういう人たち向けにのみ込みやすく調理された「介護食」や「嚥下(えんげ)食」だが、見た目も味もちょっと……、と感じる人も多いのでは。でも京都の外科医、荒金英樹さん(53)が仲間を巻き込んで開発に携わるメニューは、その固定観念を覆すだろう。京料理、和菓子、お茶、日本酒。どれも通常の食と遜色ない。秘訣(ひけつ)は、料亭や酒造会社など医療職以外とのコラボにあった。
10年前に京都府や滋賀県の医療職らと「京滋(けいじ)摂食(せっしょく)嚥下を考える会」を設立した荒金英樹さん。本業は、京都市内の病院の外科医だ。でも今では、「介護食」や「嚥下食」の分野でこの人を知らない人はいない、というほどの有名人になってしまった。本人も「本業は外科医なんですけど、あまり知られていません」と笑う。
介護食に関心を持つようになったきっかけは、約20年前に荒金さん自身が、足を骨折したことだ。ちょうどそのころ、多職種による患者への適切な栄養管理を実施する「栄養サポートチーム」がいくつかの病院にでき始めていた。外科医なのに手術室に立てず時間を持て余していたため、栄養学の本を読んで興味を持ち、自分の勤める病院に栄養サポートチームを作った。その中で病院食や介護食を実際に見たとき、「もっと食べたくなるものを作れないか」と思った。そして、ここから先がほかの医師たちと違う。「せっかく京都にいるのだから、料亭とコラボしたら面白い」と考えたのだ。
味、香り、見た目も大切に
早速、京都の料亭が入る「日本料理アカデミー」に協力を頼み、2012年1月から毎月、病院の食堂などで、「おいしい介護食」を作るための試食会や話し合いを始めた。名づけて「嚥下食プロジェクト~京料理~」だ。
最初の試食会でのことだ。病…
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- 佐藤陽(さとう・よう)朝日新聞文化くらし報道部・be編集記者
- 横浜総局時代に、超高齢化の実態や取り組みを描いた「迫る2025ショック」を2年半連載、『日本で老いて死ぬということ』(朝日新聞出版)として出版した。台湾でも翻訳された。自身の心の病をきっかけにメンタルヘルスの取材も続ける。早稲田大学非常勤講師として「産業社会のメンタルヘルス」の講義を担当する。