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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外出自粛要請や休校が続いている。家庭内で過ごす時間が増え、女性や子どもたちが夫や恋人による暴力(DV)、虐待、性暴力に遭うリスクが高まっている。被害者を支える現場をみた。

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 小さなアパートの一室が、DVや性暴力の被害者支援の最前線だ。NPO法人「山口女性サポートネットワーク(DVネット)」の事務所には、7人ほどの女性スタッフが交代で詰める。支援内容は電話や面談での相談のほか、警察や病院などへの同行、就職や新居探しといった自立のサポートまで多岐にわたる。

 DVネットによると、新型コロナの影響で外出自粛が広がった3月以降、相談件数自体は減っているという。「夫ら加害者がいつも家にいるから、電話で相談できない人が多いのでは」と懸念している。

 DVネットの普段の活動にも新型コロナの影響は及ぶ。寄付された食材を使って避難してきた被害者らに昼食を提供してきたが、感染防止のため4月中旬から取りやめた。経済活動が停滞し、寄付の減少や、被害女性の働き口がなくならないかも気がかりだ。

 国も動いた。内閣府男女共同参画局は4月20日から急きょ、通常の相談ダイヤルに加え、フリーダイヤルの相談電話やSNSなどでの相談受付を始めた。DVネットも、全国各地で同様の活動をしている団体と連携して独自のSNSアプリを開発し、早期運用をめざしている。

 DVネットの活動の原点は、1995年の世界女性会議(北京会議)。全国で男女平等をめざす機運が高まり、県内でも女性たちが勉強会を始めた。暴力を受けた女性が避難するシェルターの運営者らを講師に招く活動を続け、2002年春、シェルターを備えたDVネットが発足した。

 山口県警によると、昨年のDVの相談受理件数は1087件。01年に配偶者暴力防止法が施行して以来最多だった=グラフ参照。DVネットも当初は年に1、2人をシェルターに受け入れる程度だったが、昨年は18家族を受け入れた。

 4月のある日は外国籍の女性がDVネットの事務所を訪れた。日本人の夫から外出の禁止やセックスの強要といったDVを受け、子どもを連れて家を飛び出した。片言の日本語で、子どもが通う学校からの配布物の内容が分からないと訴えた。スタッフが2時間近くかけて説明した。

 「自立支援という言葉は簡単だけど、実際はとってもエネルギーがいる」とスタッフの一人は語る。その間にも、矢継ぎ早に相談の電話が入る。アパートに住み始めたものの近隣トラブルで退去を迫られている女性、家族から精神的暴力を受けている女性。「どれも深刻。個々の状況に合わせて支えていきたい」

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 新型コロナの影響で、休校や休園中の子どもが虐待に遭う恐れも指摘されている。

 だが、18歳までの子どもを対象に電話相談などをしている「チャイルドラインしものせき」(下関市)は、4月から活動休止を余儀なくされた。スタッフの多くが医療や福祉関係だからだ。「虐待は増えているはず。なるべく早く再開したい」と担当者は話す。

 性暴力の被害者をサポートする山口県男女共同参画相談センターは現在、開設を続けるが、スタッフの感染防止に神経をとがらせている。2017年に専用相談ダイヤル「あさがお」を開設。昨年度はのべ415件の相談が寄せられ、17年度より3割ほど増えた。性犯罪の無罪判決に抗議する「フラワーデモ」などで性暴力への関心が高まり、件数が伸びているという。

 災害をはじめ社会が不安定なときは性暴力も起きやすいとされる。山根由紀所長は「閉所すれば、被害者支援が止まってしまう。感染防止策をとり、態勢が後退しないようにしたい」。(山田菜の花)

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 DVネットの元には、新型コロナウイルスの経済対策である「特別定額給付金」に関する問い合わせも寄せられている。1人あたり10万円支給なのに受給権者は夫らを想定した「世帯主」で、DVや虐待の被害者が受給できるか不安が広がっているからだ。

 DVネットは総務省のホームページを勧める。特に事務処理にあたる自治体向けQ&A(https://www.soumu.go.jp/main_content/000685827.pdf別ウインドウで開きます)には、加害者である世帯主が家を出ている場合など、具体的なケースを説明している。

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【DV】

・DV相談ナビダイヤル(0570・0・55210) 最寄りのDV相談支援センターにつながる。特に日中は対応を取りやすい。

・DV相談+(プラス)(0120・279・889、サイトhttps://soudanplus.jp/別ウインドウで開きます) 新型コロナウイルスの流行に伴うDVの増加と深刻化を懸念し、4月20日に新設。SNSやメール相談も受け付ける。無料で24時間、10カ国語対応。

【虐待など】

・児童相談所虐待対応ダイヤル(189) 最寄りの児相につながる。24時間対応で無料。

・チャイルドライン(0120・99・7777、サイトhttps://childline.or.jp/別ウインドウで開きます) 18歳までの子ども専用で全国共通。電話は毎日午後4時~午後9時で、無料。一部の日はチャットでも相談できる。

【性暴力】

・やまぐち性暴力相談ダイヤル「あさがお」(083・902・0889) 24時間対応。医療機関や弁護士、カウンセラーの仲介なども行う。