ヒーローだって泣くこともある 中の人、仮面の下の思い
川野由起
「ヒーロー」は、ひざをつき、うめきながら泣いていた。
赤い鎧(よろい)をまとい、腰には変身用のベルト。りりしい姿と裏腹に、守ると決めた人を敵にさらわれて、こぶしを地面にたたきつけた。
2018年の冬。宮城県石巻市のホールで、ステージを400人が見つめていた。「がんばれー!」と叫び続けていた子どもたちが一瞬静まりかえる。再び助けに向かおうとするヒーローを、かたずをのんで見つめた。
仮面の下で、男性(57)は本当に涙ぐんでいた。
うちのめされても、はい上がる。その姿が、これまでの自分と重なった。
11年の春。東日本大震災から1カ月がたったころ、経営する企画制作会社で、電話を受けた。
「子どもたちがヒーローに会いたがっている。慰問してもらえないか」
避難所に身を寄せている人か…