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 新型コロナウイルスの感染拡大による休校で、児童虐待の深刻化が懸念されている。子どもが学校に来ないことで虐待が見つけづらくなっている。家に長時間いて怖い思いをしたり、おなかをすかせたりしている子どもたちを、どうすれば守れるのか。(長富由希子、花房吾早子、大野晴香)

 「子どもと死にたい」。4月上旬の深夜、ひとり親を支援する大阪府豊中市の上野敏子さん(51)のスマホが鳴った。

 かけてきたのは、府内に住むシングルマザー。夜に飲食店で働き、小学生の子を育てる。新型コロナの感染対策で店が営業を自粛し、収入が激減。生活が見通せず、いらだち、子に手を上げているという。

 府に緊急事態宣言が出た4月以降、通常の月30件の2倍近いペースで相談が寄せられる。上野さんが同市で営む食堂「ごはん処おかえり」が居場所だった子たちも心配だ。約15人が放課後や休日を過ごし、無料で食事をしてきた。親から暴力を受けたり、家で食事を十分に用意してもらえなかったりする子がいた。しかし、「狭い食堂では感染を防げない」と同月7日に閉めてから状態がわからない。「家が安全な場所ではない子が、逃げ場を失っている。行政は、こうした子が休校中に過ごせる場を作る必要がある」

 4月16日夜7時前、大阪市東淀川区の子育て支援も兼ねた個別指導塾に、中学2年の男子生徒がやって来た。他の塾生らと勉強の合間に冗談で笑い合い、3時間ほど過ごした。

 数年前から、義父から蹴られるなどの暴力を受けてきた。男子生徒は日曜を除く毎日、ここに身を寄せる。運営の本川誠さん(43)は「感染防止が大事だが、ストレスがたまる今こそ、逃げ場所を残しておきたい」という。

 貧困や虐待などリスクの高い子どもたちに居場所を提供するNPO法人こどもソーシャルワークセンター(大津市)の幸重(ゆきしげ)忠孝理事長(46)によると、新型コロナのために仕事がなくなったり逆に忙しくなったりした親の不安を子どもが感じ取り、ストレスをため込む様子が目立つという。センターで提供するお菓子や夕飯をいつも以上にたくさん食べるなど、給食が食べられない影響も見られるという。幸重さんは「しんどい思いをしている子をほったらかしにはできない。子どもたちの変化を注意深く見ながら、支援を続けたい」と話す。

 「母親からしつこく『消えろ、消え失せろ』と大声で言われ、物を投げられました。これって虐待ですか?」。全国から相談が寄せられている名古屋市のNPO法人「CAPNA」には4月半ば、中学1年生の男子生徒からこんなメールが届いた。今月初めには、母親からの暴言に苦しむ別の高校生からも「この状況から逃れるには、どういう方法がありますか」とすがるようなメールがあった。

 CAPNAは、内容を見極めて対応。緊急性が高い場合は児童相談所につなげたり、警察への相談を勧めたりしている。この高校生に対しては、複数の相談機関を紹介したという。専務理事の水野真由さん(45)は「先がみえない不安のなか、お母さんたちが戸惑い、煮詰まっているのではないか」とみる。

 実際に「子どもを怖がらせ、不安にさせ傷つけてばかりいるようなことがつらい」など、親からの相談も相次いでいるという。

 国や自治体は、休校による児童虐待の「潜在化」を恐れる。奈良市では、市内の学校が休校した3月、虐待の相談対応件数が53件と前年同月の71件から減少した。特に、学校や放課後児童クラブからの虐待の相談対応件数が2件と昨年3月(27件)から激減。市子育て相談課の東浦一郎課長は「教員が、あざの有無や話す様子などから気がつくことが多いが、休校では難しい」と話す。大阪市こども相談センターの岩田幸夫虐待対応担当課長も「親子が長時間一緒で、雇用も不安定。虐待のリスクは高まる」と危惧する。

 安倍晋三首相は4月24日、対策の強化を指示。厚生労働省も27日、市町村が設置する「要保護児童対策地域協議会」に登録されている子どもについて、週に1回は学校や幼稚園などが状況確認をするよう通知。文部科学省は4月21日、全都道府県教育委員会などに対して、登録されている子どもには「1週間に1回以上」、全児童・生徒を対象に「2週間に1回程度」、学校が電話などで心身の状態を把握するよう通知した。

 ただ、自治体で対応の差が出ている。感染予防のため学校への教職員の出勤を3割程度に減らしている奈良市教委では、全児童・生徒に出勤した教員が電話することに。加えて、特に心配な家庭については、教員が配布物などを届ける際に、可能な限り、子どもを目で見て確認するよう求めた。

 大阪市教委も週に2回程度、全児童・生徒への電話での健康確認を求めていたが、在宅勤務する教職員が増えたため4月15日に、5月6日まで見合わせることに決めた。市教委の担当者は「個人情報を持ち帰って自宅で作業をするのは困難と判断した」と話す。特に心配な家庭については「状況の把握」を学校に求めているという。

 一般社団法人「日本家族心理学会」理事長で東北大学大学院の若島孔文教授(臨床心理学)の話 一緒に生活をしていて、自分が相手に「いらつかなかった時」を記憶し、その時の条件をよく思い出して繰り返してみるとよいでしょう。家族以外の人とSNSや電話などでつながる時間を作り、「閉鎖性」を少しでも弱めることが効果的。密集した場所を避けることができるなら、家族で散歩に出かけることも一案です。互いをずっと見続けるのではなく、道端に咲いた花や景色など同じ物を見ると、新たな話題を見つけることができます。

 児童養護施設を出た人の相談所「ゆずりは」(東京)の高橋亜美所長の話 休校で家にいて怖い思いをしたり、おなかがすいたりしている子どもたちへ。あなたを守りたい大人は必ずいるので、先生や友だちのお母さん、近所の人、相談の電話の人たちにあきらめずに伝えてね。保護者のみなさんへ。仕事を失ったり、子どもの世話が長時間になったりして苦しいのは当然です。感じた気持ちを誰かに話して下さいね。

主な相談先

 □児童相談所虐待対応ダイヤル(24時間) 189

 □24時間子供SOSダイヤル 0120・0・78310

 □よりそいホットライン(24時間) 0120・279・338

【子ども向け】

 □チャイルドライン(18歳まで)

 電話(毎日午後4~9時) 0120・99・7777

 ネットでのチャット(木、金) https://childline.or.jp/chat/別ウインドウで開きます

 □10代のための相談窓口まとめサイトMex(ミークス) https://me-x.jp/別ウインドウで開きます

【保護者や周りの大人向け】

 □DV相談ナビ(各都道府県の相談機関につながる) 0570・0・55210

 □DV相談+(24時間) 0120・279・889、https://soudanplus.jp/別ウインドウで開きますからメール(24時間)やチャット(正午~午後10時)も可

 □一般社団法人オンネリ(午前10時~午後10時、LINEで相談) https://line.me/R/ti/p/%40744iaull別ウインドウで開きますから「友だち」に追加