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 治ったはずなのに、検査で再び陽性になった新型コロナウイルスの感染者が全国で少なくとも31人いることが、自治体への取材などでわかった。検査で陰性を確認した上で退院し、1カ月後に再発した人もいる。体に残ったウイルスの仕業か、2度目の感染かははっきりしないが、新型コロナのやっかいな特徴に専門家も注視している。

 検査で陰性と確認された後に再び陽性になった事例は、国内では2月末に大阪府で初めて報告された。厚生労働省は3月、再陽性が「まれな事例」として確認されているとし、退院後も4週間は健康状態を確認するよう注意を求めた。

 こうした例は各地で相次いでいる。朝日新聞が過去の報道などをもとに再陽性の事例を調べると、5月6日までに少なくとも20~90代の計31人で再陽性が確認された。退院してから症状が出たのが28人。ほか3人は症状はなかったが、再度の検査で陽性と判明した。

 経過がわかった24人を調べると、退院してから症状が出るまでの期間は1~31日で平均9・1日だった。

「何が起きても不思議はない」

 2月末に38・5度の熱やせきが出た名古屋市の20代女性は肺炎と診断され、新型コロナの感染が確認された。10日間ほど入院して退院。だが1カ月たって再びせきが始まり、検査結果は陽性だった。退院後に再び症状が出て、陽性と確認された人は名古屋市だけでほかに3人。市の担当者は「新型コロナはまだよく分からないもの。何が起きても不思議はないと思っている」と話す。

 北海道の看護師の40代女性は倦怠(けんたい)感や発熱が出て、新型コロナの感染が判明。8日後には症状は消え、その後、保健所の検査で2日連続陰性になって、退院した。だが、自宅待機を10日ほど続けた後、勤務先の病院が念のため検査すると、陽性という結果。女性は平熱で症状も無かった。

 病院は数日おきに検査を繰り返したが、5回中4回が陽性。保健所の再度の検査でも陽性になり、退院から1カ月後に再入院することになったという。

 東京都は再陽性の届け出はないと取材に答えたが、退院後に「具合が悪くなった」という相談はあるという。

 こうした事例について国立感染症研究所と厚生労働省の研究班も分析中という。

 中国・広東省政府は2月末、病院で治療を受けて退院した人のうち、14%で再び陽性反応が出たと発表した。韓国では5月6日時点で、感染者約1万人のうち3・3%の356人が再陽性になっている。4月17日の発表では、隔離の解除から再陽性と判定されるまでの期間は平均13・5日だった。

専門家「誰に聞いてもわからないのでは」

 なぜ再び陽性となるケースが起こるのか。

 考えられる理由の一つは体にウイルスが残っているのに検出されないことだ。厚労省は、症状がよくなり、一定の間隔をあけた検査で2回連続で陰性になれば退院できるとしている。だが、ウイルスの有無を調べるPCR検査は、ウイルス量が少ないと検出できない。肺にウイルスが残っていても、のどや鼻から検体を採れば、陰性になることも考えられる。

 一方、再び感染した可能性も現時点では否定しきれない。「再燃か再感染か、現状は誰に聞いてもわからないのではないか」。こう語るウイルスに詳しい東京農工大の水谷哲也・国際家畜感染症防疫研究教育センター教授は「鼻やのどに感染するウイルスで、長く持続感染するタイプは知られていない。再陽性になったときのウイルス量や個人の免疫状態を分析する必要がある」と指摘する。

 水谷さんによると、新型コロナと遺伝情報が似たSARS(重症急性呼吸器症候群)のコロナウイルスは、持続感染しないという。一方、4種類のコロナウイルスは一般的なかぜの原因になる。「長引く」「ぶり返す」といったかぜの現象は一部のコロナウイルスの特徴なのかもしれない。ただ、新型コロナでは、重症化する人と無症状ですむ人がいる原因すらわかっておらず、「新型コロナがはっきり理解されるのは何年も先のことだろう」と水谷さんは話す。

 感染症に詳しい山形大の森兼啓太・病院検査部長は「再燃の可能性が高いと思われるが、いずれにせよ一般的ではないと考えていいのではないか。まれなことを想定し、退院や社会復帰の基準を厳しくすることは現実的ではない」と指摘する。

 菅義偉官房長官は7日の記者会見で「再び発症して陽性になる例が複数存在することは承知している」と述べた。(後藤一也、木村俊介、阿部彰芳)