拡大する菅義偉官房長官(中央奥)の記者会見。
感染防止対策のため記者席の間隔が空けられている=2020年4月8日、岩下毅撮影
新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、報道の現場も様変わりしている。現場に足を運ぶ直接取材から、電話、オンライン取材が中心に。事態が急に進み、当局の発信に報道が流される恐れを指摘する声もある。非常事態の下で報道はどうあるべきか、コロナ後のメディアはどうなるのか。福島第一原発事故後のテレビ報道を検証した早稲田大の伊藤守教授、現代日本政治が専門の東京都立大・佐藤信准教授、メディア論が専門の上智大・音好宏教授に語ってもらった。
――危機の進行と同時並行で、政府の対応の是非を報じていくという点で、新型コロナと9年前の原発事故は似た難しさがあります。伊藤さんは著書で、原子炉の安全性や放出された放射性物質の人体に与える影響について、テレビが政府見解に沿う形での報道を繰り返したと指摘しました。
拡大する伊藤守・早稲田大教授
いとう・まもる 1954年生まれ、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は社会学、メディア研究。著書に3・11報道を検証した「ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか」など。
新型コロナをめぐり、特にテレビ報道は、多元的な情報を提示しきれていないという意味で、3・11に近い問題が生じていると思います。
3・11のときは、「原子炉は安全だ」「放射性物質が直ちに人体に影響を与えることはない」とする政府の主張に対して、ネットでは一部の専門家から反論が出ました。今回も感染把握のためのPCR検査をめぐり、政府や専門家会議の対応について、専門的知識を持った人たちからの批判がネット上では流れています。
確かに科学的に何が正しい対応か、判断がつかない状況ではあるものの、メディア側は、読者や視聴者に混乱を与えることを恐れるあまり、一つの情報源から一つの情報を出すべきだと考える向きが強すぎる。読者や視聴者はすでに多様な情報に接していて、何が正しいのか自分なりに判断したいと思っている。一つの情報源にだけ接していれば大丈夫とは、読者や視聴者は考えてはいない。
――メディア側としては、不確定な情報を伝えることに抵抗感はあります。
もちろんファクトに関して不確…
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朝日新聞社会部