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 新型コロナウイルス対策で休業が続いた映画館。7日から県の休業要請の対象外になったが、経営規模の小さいミニシアターは、集客減などで苦境に立たされている。そんな中、募金やクラウドファンディング(CF)、ネット上映など、ミニシアターを支える動きが広がりつつある。

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 茶色い扉を押し開けると、薄暗い劇場に座席の鮮やかな青が飛び込んでくる。前方には幅4メートルほどの小さなスクリーン。新潟市中央区のシネ・ウインドは連休中も休館を続けていた。

 「むしろさっぱりした気分もあるかな。営業を続けるべきか、ずっと葛藤していましたから」。支配人の井上経久さん(52)は休館した4月22日、無人の客席を見つめながら話した。

 1985年、古町の名画座「ライフ」の閉館をきっかけに市民が資金を出し合い開館。上映作品の選定からイベントまで、市民の意見を募りながら運営してきた。

 井上さんは「ただ見るだけでなく、映画を『体験』し、記憶として持ち帰ってもらう場所」という。上映作品の監督が訪れ、撮影秘話を語ったり、観客とともに食事をしたりするイベントも開催。舞台と最前列の客席の距離はわずか1メートルほど。大型映画館にはない距離の近さも魅力だった。

 3月に入り県内でも感染が広がると、この魅力がネックに。客足も遠のき、売り上げは通常の4割以下に減少した。「映画は見てもらうことで完結する」と井上さん。本当は多くの人に見に来てほしいが、安全のためには上映するべきではない。県からの休業要請前に休館を決めた。

 収益の半分を入場料でまかなうシネ・ウインド。休館は死活問題だった。どうすればいいのか悩む中で、この映画館のルーツにたどりついた。「ピンチの時こそ市民と一緒に乗り越えよう」と募金を始めた。

 4月20日から2週間で約500万円が集まった。県内だけでなく、かつて新潟に住んでいた県外の人からも寄付があったという。

 劇場の青い座席も募金で昨年、新調したものだ。「新潟は冬は暗い日が多い。だから春の青空がすごくきれいに見えて」。井上さんの感性を込めた色だという。「暗い時代が終わると信じて、また映画を届けたい」

 休業要請が解除された7日、営業の再開に踏み切った。上映回数を減らし、会員のみの予約制とし、間隔を空けて座れるよう観客は20人までに限定した。入場前の検温も行う。井上さんは「0から1に、1から2に。安全に配慮して少しずつ再開したい」と話している。

 募金は7月31日まで。口座振り込みや公式サイトのショップ(https://cinewind.thebase.in/別ウインドウで開きます)からのクレジットカード決済など。問い合わせは025・243・5530へ。

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 ミニシアターを支援する動きは全国規模で広がっている。映画監督有志らが4月中旬にクラウドファンディング形式で始めた「ミニシアター・エイド基金」(https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid別ウインドウで開きます)は支援総額が2億円を超えた。集まった基金は全国のシアターに分配するという。

 休業中のガシマシネマ(佐渡市)も基金に参加する。店主の堀田弥生さん(44)は「多くの人がミニシアターを必要としてくれることに感動した。映画は社会を映す鏡。今後も足を運んでもらえるような運営をしていきたい」。

 ネット配信を通じた試みも始まった。映画監督の想田和弘さんと配給会社の東風(東京都)が立ち上げた「仮設の映画館」(http://www.temporary-cinema.jp/別ウインドウで開きます)は、ネットで映画を有料配信。視聴者が選んだ映画館に収益が分配される仕組みだ。

 15日まで休館予定の高田世界館(上越市)は、2日から想田監督の作品「精神0」を仮設の映画館で上映し始めた。支配人の上野迪音(みちなり)さん(32)は「収入がない中、大変ありがたい。もちろんスクリーンならではの魅力もある。映画館の良さを再認識してもらうきっかけになれば」と話している。(高橋俊成)