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 新型コロナウイルスの感染拡大が、川俣町特産の地鶏「川俣シャモ」を直撃している。普通の鳥肉より高値のため飲食店での需要が多く、主要取引先の首都圏からの注文がなくなったためだ。在庫が増え、飼育農家は減産を迫られている。この春から町を挙げてPRを強化しようとしていた矢先の逆風に、関係者は頭を痛めるとともに、在庫の買い支えに期待している。

 町内12軒の農家と1社が6万数千羽(昨年度)を飼育し、町農業振興公社が加工と販売を担っている。公社によると、出荷の半分以上は県外で、首都圏の鳥料理やフレンチ、イタリアンの店が主な販路だが、緊急事態宣言が東京などに出された4月7日以降、注文が来なくなった。県内も宣言の対象になり、扱っている飲食店の休業や営業時間の短縮が相次ぎ、需要は急減したという。

 4カ月近くかけて飼育しているため、週4日の肉処理は継続しており、加工の担当者は「肉を冷凍保存しているが、在庫は増える一方」と明かす。

 ヒナを飼育農家に供給する役割を担う「川俣シャモファーム」の斎藤正博さん(69)は「ヒナの供給を生産者全体で7割減らす方向で調整している。東日本大震災の直後も大変だったが、今回はもっと深刻。先が見えず取引先がどうなるのか」と不安を募らせる。

 川俣町はNHKで放映中の連続テレビ小説「エール」のゆかりの地であることから、町の魅力を発信する絶好機だった。その一つが「道の駅」の改修で、シャモの加工施設とレストランを整備し、大型連休中にリニューアルオープンの予定だったが、当面延期となった。

 生産者の努力も水を差された。生産者でつくる川俣シャモ振興会は2月、農産物の安全性を第三者機関が審査する日本の規格「JGAP」の認証を取得。団体による肉用鶏の認証は全国初という。東京五輪・パラリンピックではJGAPが選手村で提供できる食材の調達基準の一つになっており、五輪に向けてアピールしていく矢先だった。「これから盛り上げていく時期だったのに」と町産業課の担当者は残念がる。

 関係者の頭を悩ませているのが在庫の行き場。町農業振興公社の幹部などが、企業や公共団体を回って協力を求めている。ネット販売にも力を入れ、丸焼きなどを割引価格で販売。担当者は「ネット販売の反応は良く、窮地を何とか乗り越えたい」と話す。(深津弘)