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 尻の下にも半世紀――。桂文枝さん(76)といつも転がっている、あのイスの話やねん。ボケとツッコミの大阪魂が生きてんねんで。

拡大する写真・図版半世紀近く愛用されているイス=ABCテレビ提供

 放送開始50年目を迎えたABCテレビの長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」。文枝さんの司会はスタート時からで、同一司会者によるテレビトーク番組の最長放送としてギネス世界記録を持つ。文枝さんの座るイスもまた、ほぼ同じキャリアを誇る。番組美術24年のベテラン佐々文章(ふみあき)さん(53)は「日本一有名なイスといっても過言ではない」と胸を張る。

拡大する写真・図版1988年のイスコケ。若々しくダイナミックなコケぶり=ABCテレビ提供

記事後半では、文枝さんのイスへの思いを聞いたほか、美術担当スタッフにもインタビューしました。

 放送が始まったのは、東京・大阪ともに1971年。その数年後からずっと番組で愛用され、海外収録へも連れて行く。空港で「なぜイスを持ち込むのだ」といぶかしがられ、内部に怪しい物を仕込んでいないかと厳しいチェックを受けたことも。それでも屈せずフランスやカナダ、ベトナムなど世界各地を旅してきた。

拡大する写真・図版1971年1月に始まった「新婚さんいらっしゃい!」

 そこまで重宝されるのは「転びやすいから」。京都・太秦の小道具の老舗「高津商会」を通してやって来たイスで、70年代にはやったデザインだ。全体に丸みを帯びて底は円形。バブルの残り香がプンプンするような古くささで、スタジオの雰囲気とちぐはぐだからと肩たたきにあいそうにもなった。「新しいイスを探し回ったこともあるけど見つからなくて。そもそもイスは安定しているべきもの。ずっこけやすいイスはありえず、探す情熱を失った」

 いつか、イスのルーツを調べたいともくろんでいる。「身内の局ですが、『探偵!ナイトスクープ』は動いてくれるでしょうか」。んなアホな!

 不安定というけったいな欠点があるがゆえ、文枝さんが転がれる。「(パズルの)ピースが偶然かみ合って生まれた芸。師匠にとってイスは分身、相棒。不思議なもんですが、これでええんやという究極の結論に達したのです」

拡大する写真・図版1996年のイスコケ。際どく豪快にゴロン。かつては番組収録は誰でも観覧でき、OLやサラリーマンが持参する昼飯のにおいが漂っていたという=ABCテレビ提供

 作り込んだ豪華なセットを使う在京局なら、とっくに買い替えられていたかもしれない。「大阪はいらんとこにお金はかけませんから」。それでええんか。

拡大する写真・図版イスから転げてのびる桂文枝さんを見守る新婚さん=ABCテレビ提供

 夫婦の数だけ逸話はある。「キスのしすぎで窒息しそう」「洗い物の最中、妻にパンツを下ろされる」「夫が家で愛を叫びまくる」……。文枝さんをこかしたろか、という話を引っ提げて、登場した新婚さんは約4900組に上る。

 応える文枝さんは今年喜寿。コケ方にも熟練の味わいが増している。若い時の飛び出すような勢いはないが、クシャッとまあるく。ともに寄り添い転がるイスは、長年のお連れ合いみたい。生地の張り替えなど、丁寧な手入れがアンチエイジングの秘訣(ひけつ)だ。

拡大する写真・図版2000年代のイスコケ。山瀬まみの慈愛に満ちたサポートも番組に花を添える=ABCテレビ撮影

 いま、コロナ禍で番組の収録は…

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