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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため休校が続く埼玉県内の公立学校で、オンライン学習に取り組む動きが出ている。学びを着実に進めようと、教育現場で試行錯誤が続いている。

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 埼玉県戸田市は4月28日から市内全18の小中学校でオンライン授業を始めた。

 戸田東小では同日午前10時から、「どうぞよろしく!」(1年)、「詩『創造』、漢字練習の進め方」(6年)など、先生たちがつくった学年ごとの国語の授業動画を配信した。

 デジタル端末がない家庭には市保有の約3千台を貸し出した。通信環境が整備されていない家庭には学校で動画などを端末に入れて対応。1万1千人余りのすべての児童生徒に端末が行き渡るようにした。

 インターネットのYouTubeなどを使った動画を見るだけの「一方通行」の学習と違い、先生と児童が個別にやりとりできるのが特徴。グーグルのアカウントを市立小中学校に通うすべての児童生徒に配ってログインしてもらい、授業を行う。

 こうした「双方向」の学習ができる公立学校は、全国でも少ない。しかも、学校単位でなく市全体で取り組めるのは、戸田市がこれまで、ICT(情報通信技術)を活用した学習実績を積んできたからだ。

 オンライン授業を見据えた先生向けの研修を4年前からスタート。教科書の内容をタブレット端末やパソコンに取り込んだデジタル教科書を使った授業も行ってきた。

 オンライン授業ではこれまで、著作権法上、著作者の許可なく教科書などを画面に表示できなかったが、4月28日に著作権法が改正され、規制緩和されたことも後押ししている。

 一方、問題点も浮かび上がってきた。

 向上心の強い子どもは学習内容が進むが、興味のない子どもは端末を立ち上げようともしない。勉強ができる家庭環境にない子どももいる。戸ケ崎勤教育長は「コロナ禍をICT活用を進める機会にしたい。一方、ICTが進めば進むほど、先生の重要度も増している」と指摘している。(堤恭太)

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 「今日は小学5年生の算数。小数をかける筆算の仕方について一緒に学習していきましょう」「動画を止めてやってみましょう」

 男性教諭がそう呼びかけながら、黒板に書いたかけ算の問題の解き方を説明していった――さいたま市教委が11日から始める学習支援動画の一コマだ。教員と児童らがウェブ上でやりとりすることはない。

 市教委によると、動画は1本15分ほどで、市立学校の教員らが分担して作成。第1週には計73本を配信する予定だ。児童らには動画を見た後に、配布された学習プリントを解いて提出してもらう。一連の流れで学習状況を把握するという。

 行田市では市ホームページに「ぎょうだスタディチャンネル」を新設。4月30日から外国語指導助手(ALT)による英語や、数学など小中学生向けの動画配信を始めた。ベテラン教員23人が英語を除く動画の講師を務めている。

 熊谷市では同28日から、教員らがつくったWEB版「くまなびスクール」の配信を始めた。2014年度に始めた同スクールは土曜日や放課後の時間帯に教員らが校内で行う学習支援事業だが、WEB版は臨時休校に合わせた家庭学習支援版だ。

 市教委が市内の全小中学校の校長に学習動画作成への参加を呼びかけ、教諭らが動画作りを始めた。主要5科目のほか体力作りなどもあり、コンテンツは100本を超えた。コンテンツはすべて保存し、臨時休校終了後も学習支援材料として使う予定だ。

 新座市教委では4月下旬から、教員らが作成した動画を40本以上をYouTubeにアップしている。臨時休校が長引き、子どもたちの教育機会が失われる中で、同市教委はネット上の学習資料をいつでも見られるオンデマンド方式で学習支援をすることにしたという。市内の小中学校の教員が国語、算数・数学、理科、社会など科目ごとに作成した動画には、これまでに3万5千を超すアクセスがあったという。

 ふじみ野市教委は、タブレット端末約1740台を貸し出す。ネットを使った民間学習支援サービスの活用や各学校の教員が作成した110本の動画をYouTube配信するなど、学校再開時の予習となるような補充学習を実施する。ネット環境が整わない家庭に対し、学校のパソコンルームを開放するほか、タブレット端末は来週以降、順次貸与する準備を進めている。

 越谷市は12日から、「YouTube 越谷市教育委員会公式チャンネル」に教員らがつくった動画を配信。中学校では、国語、数学、英語、社会、理科の他に体育の授業内容のエッセンスを10~15分にまとめる。配布済みの教材プリントを補完する。

 川越市立教育センターは今月初め、4本の「家庭学習動画」を市ホームページに掲載した。小学3年の国語「漢字の表す意味」、中学1、2年の英語など、教員が黒板に書き上げるイメージで約7分~約11分。同センター職員が作った。ただ、担当者は「各学校で学習動画を作る際の参考、サンプルです」。

 市教委は「理解が進まない子をとり残さないため」として、課題プリントや電話を介した「先生対子どもの双方向型」を重視するとしている。一方通行の動画学習は補完的との立場で、動画の作成や配信は各校の判断に任せている。学校側では、YouTubeへ投稿する自前のアカウントを持っておらず、サンプル動画掲載の後、数校で取得する動きがあるという。(坂井俊彦、斯波祥、春山陽一、西堀岳路)

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 文部科学省によると、2019年3月時点で公立小中学校などに配備されたパソコンやデジタル端末は、全国平均で子ども5人に1台の割合。埼玉県は7人に1台で、47都道府県で45番の低さだ。国は、小中学生に1人1台の端末を整備する目標達成の時期を23年度から今年度中に前倒しする方針だ。

 埼玉大教育学部の高橋哲准教授(教育行政学)は「これまで行政は子どもたちの学習に必要な設備を整えることにあまりお金をかけてこなかった」と指摘。「すべての家庭にパソコンなどの端末があるわけではなく、双方向のやりとりができない授業内容の解説動画だけでは習熟度も判断できない」と話す。動画で学習内容が理解できない子どもが取り残されないようにするため、プリントで補完するといった学習支援も必要だとしている。(山田暢史)