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 新型コロナウイルスの影響で外食産業が落ち込み、食材が行き場をなくしている。佐賀市の福祉事業所では、障害がある利用者たちが育てた野菜を、市社会福祉協議会や子ども宅食に寄付する取り組みを始めた。

 同市鍋島町八戸の事業所「活(い)き活(い)き工房 夢ファーム」では、室内の工場で水耕栽培に取り組む。LEDの光が照らす栽培棚で、レタスやバジルなどが青々とした葉を茂らせる。利用者たちは慣れた様子で黙々と作業を進めていた。

 利用者は、知的障害や精神障害などがある10~60代の18人。野菜は無農薬で、天候に左右されず安定して供給できるため、主に市内のホテルや旅館、飲食店に販売してきた。運営する社会福祉法人「ステップさが」理事の相場芳樹さん(56)は「品質や衛生管理を徹底し、一生懸命に作っている」と話す。

 ただコロナの影響で3月中旬から注文が減り始め、4月の売り上げは例年の3分の1程度まで落ち込んだ。野菜の生育は急には止められない。知人らに購入を呼びかけたが、泣く泣く処分したものもあったという。相場さんは「利用者にやりがいを持ってもらうことも重要で、それを無駄にするのはあまりに心苦しかった」と振り返る。

 そこで県や佐賀市の社協に相談。コロナでひとり親家庭からの相談が急増したと聞き、「訪れた人にプレゼントできないか」と持ちかけた。無償にはなるが、「我慢を強いられている子どもたちのためになるなら、利用者も喜んでくれるはずだ」と考えたという。

 市社協はコロナ関連の貸し付けを受け付ける相談室に、野菜を入れた箱を置いた。原則1人一つで、自由に持ち帰れるようにした。「『みんな苦しい中でも頑張っているんだ』と元気づけられた」「気持ちがうれしい」といった声が聞かれたという。食料品などをひとり親家庭に届ける「宅食」に取り組んでいる佐賀市の市民団体「スマイルキッズ」にも寄付し、届ける品に加えてもらった。

 工場では密集を避けるため、勤務を午前と午後に分けて作業を続けている。利用者の生活リズムや精神バランスが一度でも崩れると、取り戻すのは大変だからだ。相場さんは「不安は私たちが想像するよりずっと大きいはず。感染防止対策を取り、できる限り運営を続けたい」と語る。

 野菜は佐賀玉屋などで販売するほか、直接の購入も受け付けている。問い合わせは夢ファーム(0952・26・3966)へ。(福井万穂)