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 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、家庭などで余ったマスクを回収し、必要な施設に届ける取り組みが共感を呼んでいる。東京都世田谷区の酒店が店先に設置した手作りの「マスクポスト」には連日、地元の人たちが足を運び、静かに投函(とうかん)を続ける。

 3月中旬からマスクポストを設置した「和酒の店 藤小西」には、これまでに4千枚以上が提供された。店主の石田藤男さん(61)や従業員らが区内の子ども食堂や障害者施設など約30カ所に配達を重ねてきた。

 ポストに寄せられるのは手作りや外国製、子ども用など多種多様。政府が全世帯に2枚ずつ配っている「アベノマスク」と呼ばれる布マスクも、すでに300枚以上が投函された。

 150枚を届けられた障害者施設「東北沢 つどいの家」の橘直之施設長(50)は「本当にありがたい」と笑顔で受け取った。

 ポストの設置を思い立ったのは、マスクや消毒液が街角から姿を消した3月、地元の薬局に並ぶ大行列を目にしたのがきっかけだ。中に身動きのとれない車いすの障害者の姿があった。

 欲しくても買えない人が大勢いる――。危機感や焦りを込めて「マスク求む」と大書きしたポストを作ると、共感の輪が広がった。

 店の売り上げの7割は居酒屋への配達や注文。だが、緊急事態宣言の後、取引先は全店が休業中だ。アルコール殺菌できるお酒や保存食も店頭販売して、なんとか持ちこたえている。

 最近は衣料品店や飲食店でもマスクが売られるようになった。それでも、「まだまだ足りない施設がある。できる限り続けたい」と石田さん。コロナ禍の終息まで配達を続ける。(藤原伸雄)