拡大する写真・図版養老孟司氏

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寄稿・養老孟司(東大名誉教授)

 新型コロナウイルスの問題が生じ、関連する報道が盛んになって、まず印象に残った言葉は「不要不急」だった。妻と娘は外出制限で不要不急の脂肪がついたという。私は80歳を超え、当然だが公職はない。この年齢の人なら、非常事態であろうがなかろうが、家にこもって、あまり外には出ない。出る必要がない。今の私の人生自体が、思えば不要不急である。年寄りのひがみと言えばそれだけのことだが、相模原市の障害者施設で19人を殺害した犯人なら、そういう存在について、どう言うだろうか。

 この不要不急は、じつは若い時から私の悩みの一つだった。不要は不用に通じる。大学の医学部に入って臨床医になれば、その問題はない。医療がどれほど直接に役に立つか、コロナの状況を見ればわかる。医療崩壊といわれるほど病院の現場は大変で、不要不急どころの騒ぎではない。医療は世界的に現代の社会的必要の最たるものである。

ようろう・たけし
1937年生まれ。東京大学名誉教授。89年「からだの見方」でサントリー学芸賞を受賞。「唯脳論」「バカの壁」など著書多数。

 学生時代からそれはわかっていた。母は開業医で、私に医学部への進学を勧めた。時代がどうなっても、医療の腕があれば仕事があって食べていける。それが関東大震災を経験し、夫を亡くした状況下で戦中・戦後を生き抜いた母の本音だった。だから私は医学部に進学し、当時の制度で義務付けられていた1年間のインターンも済ませた。その段階で自分の専門分野を選ぶことになる。

■学問研究の意味…

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