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 自治体から民間への事業委託の動きが広がるなか、委託先の企業と雇用関係のトラブルが相次ぐ。学童保育をめぐって、大阪府守口市で指導員をしていた男女10人が市から委託を受けた企業から雇い止めされたのは無効だとして、地位確認などを求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。

 代理人弁護士によると、民間委託は、自治体の窓口業務や保育所、学校現場の給食調理など様々な分野で進む。自治体が経費を削減しようと民間委託した結果、窓口業務で偽装請負が横行したり、委託先が利益を確保するために賃金がさらに下がったりする例があるという。

 今回の訴訟の原告らは新型コロナウイルスの感染拡大で学校に通えない児童らの受け皿となる学童保育を担っていた。指導員の集団訴訟は異例という。

 訴えによると、10人は主に小学1~3年生を対象に7~35年間指導員として勤務。いずれも指導員でつくる労働組合に入り、委員長ら役員も含まれる。市から非常勤嘱託職員などとして採用された。民間委託に伴い2019年4月、ドーミーインのブランドでビジネスホテルを展開する委託先の「共立メンテナンス」(東京)との間で1年の雇用契約を結んだ。

 だが今年3月、学童保育の運営方法を批判した▽業務日誌の提出に応じない▽配布物をカラー印刷した――などの理由で同社側から懲戒処分に該当すると注意され、月末に雇用契約を打ち切られた。

 原告らは、市が学童保育を直接運営していた当時、雇い止めされないとの労使合意があり、指導員らは定年まで継続して働いていたうえ、民間委託の際も継続雇用が前提だったなどと主張。会社側の注意内容は事実関係の誤りが多く、雇用を打ち切る合理的な理由はないと訴えている。

 共立メンテナンスは「この件についての取材には応じていない」としている。

 行政の民間委託に詳しい二宮厚美・神戸大名誉教授(経済学・社会環境論)は「保育や福祉、介護分野などの民間委託は人件費を削減できる一方、経営の合理性が優先されがちで雇用が不安定になり、専門性のある人材育成が困難になる。新型コロナの感染拡大で、こうした分野で行政が積極的に運営に関わり機敏に対応する重要性が明らかになった。行政による民間委託のあり方が問われている」と話す。(遠藤隆史、編集委員・沢路毅彦)