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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年秋の全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)など三つの全国大会の中止が10日、発表された。自宅に楽器を持ち帰り、自主練習を続けてきた吹奏楽部員らは、集大成となる大会の中止に「悔しい」とショックを隠さなかった。

 「みんな練習していた。覚悟はしていたが、3年生にとっては最後の1年。気持ちの整理がつかない」。千葉県習志野市の習志野高校吹奏楽部の上杉晴(はる)部長(18)は、中止の知らせを聞き、肩を落とした。

 全国大会出場33回を数える名門校。演奏は「習高(ならこう)サウンド」と呼ばれ、学校外にもファンは多い。野球部が出場した昨年春の選抜大会では、「美爆音」と呼ばれる迫力ある演奏を甲子園に響かせ、準優勝を後押しした。

 部員数は2、3年生で計132人。例年であれば、1年生も加わり、各地での演奏会に出向く時期だが、今年はキャンセルに。楽器のファゴットを担当する上杉さんは、コンクールの曲の練習を自宅で続けていた。ただ、モチベーションを保つのが難しく、1時間しかできない日も。副部長と「どうなるんだろう」と話すこともあった。

 今も、いつ部の活動が再開できるかはわからない。だが、再開後は顧問や部員たちと話し合い、部として何ができるか、話し合いたいと思っている。「何もなかった1年にはしない」

 20年以上、吹奏楽部を率いてきた顧問の石津谷治法(いしづやはるのり)教諭(61)は、「ある日を境に学校から生徒がいなくなり、楽器の音も聞こえなくなった。毎日、やりきれない思いだ」と話す。

 このまま何もなく3年生を卒業させるのは酷と感じている。代わりにできることはないか考えたいという。

 東京都八王子市の八王子学園八王子高校の吹奏楽部部長、前川碧斗(あおと)さん(18)は「何とか開催できたらと希望も持っていたんですが……」と話す。同校は昨年、都吹奏楽コンクールで都代表を逃しただけに、今年にかける意気込みは強かった。

 吹奏楽部では休校を受けて4月、動画サイト「ユーチューブ」に専用チャンネル「八学吹部!おうちで部活プロジェクト」を作った。部員が自宅で演奏する様子を撮影した動画を公開している。

 今月6日には野球部とコラボした動画も配信した。前川さんは「もどかしい思いは野球部も同じ。今は仲間たちと前向きな気持ちを共有して、できることからがんばりたい」。

 全国大会に7年連続20回出場している東北屈指の強豪校、福島県いわき市の磐城高校の吹奏楽部顧問、橋本葉司教諭(61)は「生徒は言葉にできないくらい悔しいし、せつない」と落胆した。

 同校の野球部は21世紀枠で46年ぶりに今春の選抜大会出場を決め、部長の鯨岡美音(みおん)さんも「一生に一度あるか、ないかの経験」と、スタンドでの応援演奏を楽しみにしていた。しかし、コロナ禍で選抜大会は中止に。それでも吹奏楽部員は休校中、自宅や近くの公園で自主練習を続けてきた。橋本教諭は「大きな試練だが、音楽を今後も続け、心豊かな人生を歩んで欲しい」と気遣う。

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 全国大会の中止を受け、北海道や西関東、東海、中国、九州など6支部が、三つの大会の県大会の上位大会にあたる支部大会中止を決めた。(大嶋辰男、伊藤恵里奈、長屋護)