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 太平洋戦争の戦地から戻った後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだ復員兵の家族らの交流スペースが東京都武蔵村山市に完成した。資料や映像の展示もあり、一般の人も訪れることができる。

 スペースを作ったのは「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」の代表黒井秋夫さん(71)で、今年1月から3カ月かけて、自宅の敷地に建てた。広さは約10平方メートルで、旧満州や中国中央部の戦地に赴いた父、慶次郎さんの資料やPTSDに苦しむ旧日本兵を取り上げた本などが並ぶ。

 慶次郎さんは1945年の終戦後、中国で捕虜となり、帰国は翌年だった。仕事は長続きせず、戦争についても多くを語らないまま、76歳で亡くなった。黒井さんは「無気力で、尊敬できる父親ではなかった」と振り返る。2016年に、ベトナム戦争後に帰国した米兵の多くがPTSDを患っていると知り、「父も苦しんでいたのでは」と思うようになった。

 18年1月に会を立ち上げ、ホームページや講演会で父のことを伝えると、全国から「いつも優しい父が突然、人が変わったように暴力を振るっていた」「戦友の名前を叫んだ」などの体験談が寄せられるようになった。多くの人が自分と同じ体験をしていて、情報発信や体験を共有する拠点が必要と考えた。

 終戦から間もなく75年で、PTSDに苦しむ復員兵や家族の数は年々減ってはいる。だが、黒井さんは「PTSDによる負の連鎖は今も続く」と話す。ある40代の男性からは、父から暴力を受けて育ったと告白された。その父もまた、旧日本兵だった祖父から暴力を受けていたという。「親から子への暴力は連鎖する。突き詰めれば戦争のトラウマかも」と話す。

 「家族にとって父や祖父の姿をとらえ直すきっかけになるとともに、一般の人にも理解が深まっていけば」とも話し、地域の人が集まる機会も作る予定だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、訪れる際には事前連絡が必要。午前10時~午後5時、月、金曜日は閉館。連絡先は黒井さん(080・1121・3888)。(金子和史)

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