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 写真家の藤原新也さん(76)は1960年代のインドを皮切りに、世界中を旅して文明や社会、人のありようを見つめてきた。そのまなざしは鋭く、温かい。新型コロナウイルスで揺れ動く世界を、日本をどう見ているのだろう。(編集委員・秋山訓子)

 藤原さんが87年に著した中編小説「ノア」は、インドの「タラ・ピティ」という森の聖地を題材にした幻想的な物語だ。その森には猿がすむが、一定数を超えると火の鳥に変身して飛び立ち、森は滅びる――。

 「文明が飽和に達するさまを森と猿に託して書いたんだけど、いま、人間社会と自然がこの飽和状態に来ているように思える。この小説を書いた87年の世界の人口は50億人強。2020年は78億人。この増加の加速はすさまじい。30年そこそこで1・5倍になっている」

 写真には「色飽和」という言葉があるという。色を鮮やかにするために彩度を限界まで上げた状態だ。

 「ここ数年、テレビ画面がその色飽和を起こしている。視覚刺激の競争原理が働き、旅ものなどの風景映像の、特に緑の彩度が極端に上げられ、色飽和を起こしている。音楽にも飽和現象が見られる。個人の小さな声が消え、AKB48がそうであるように集団の大音量の時代となった。言葉もそう。少し前まで『超』がやたらはやったけれど、今は『神』。神の上はもうないよね。政治の世界も9・11以降、強者がゴリ押しする独善が横行し、息が詰まりそうだ。自然ではオーストラリアの森林大火災が示すように、温暖化も臨界に来ている」

文明も自然も臨界点に

 藤原さんは房総に家を持つが、最近、動物と人間の距離が極端に近くなっていると言う。

 「猿の出没は30年前からだが…

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