日本の首都は、高齢者の大波にのみ込まれる。東京都では25年後に高齢化率が30%に上ると推計されており、医療と介護の担い手が大きく不足する恐れが現実味を増している。そんな状況を先取りしたかのように独居高齢者が集まる都内の地域では、新型コロナウイルスの感染拡大のリスクが迫るなか、医療・介護従事者たちの奮闘が続いている。
盛夏の頃。施設の掃除で働いてもらっていた70代の男性の姿をしばらく見かけず、連携するNPOのスタッフにアパートの様子を見に行ってもらったところ、独り、部屋で亡くなっていた。エアコンがなく、猛暑のなかで酒を飲んでいて倒れたようだった。強い異臭がするのに、隣室の人はどうして気付かなかったのだろう。ノックをしてみたが反応がない。
連絡を受けた救急隊員が窓から部屋に入ったら、その部屋の住人もまた「孤独死」していた。
東京都台東区日本堤、通称山谷(さんや)地区で活動している訪問看護ステーション「コスモス」で実際にあった話だ。飼い主が亡くなり、イヌとネコの死骸とともに2年間、放置されていたケースもあったという。
「日雇いの町」として知られていた山谷だが、今はそんな労働者たちは少なくなり、貧困で身よりのない高齢者が多く住むようになった。海外からのバックパッカー向けのホテルが増え、町並みもきれいになった一方で、今も残る簡易宿泊所やアパートに独居し、貧困や病を抱える人も少なくない。「都会の限界集落」と呼ばれるゆえんである。
この風景は、格差社会と超高齢化が同時に進行する東京圏の「未来予想図」とも言える。
記事の後半では、訪問看護ステーションの活動を通して見えてくる山谷の現実を描きます。
全国から多くの人を吸い寄せ…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら