第3回85歳、気付けばたった1人の集落 W杯キャンプ地は今
菅原普
少しずつ、人が減っていった。気付けば、自分だけになった。85歳の女性が、ひとりで集落をひっそりと守っている。
大分県日田市の南部にある旧中津江村に、そんな地域がある。どう集落を閉じるか、まるで「終活」をしているかのような。
旧村内で唯一の病院や郵便局がある中心部から、車で約30分、村を南北に抜ける山深い県道を進むと、集落名と矢印を掲げたさびたカーブミラーがひっそりと現れた。
「宮原(みなばる)」
さらに曲がりくねった山道を登り切ると、生い茂った草にのみ込まれてしまった空き家、崩れたままの納屋が立ち並んでいた。
その中に、西ヤス子さん(85)の平屋建ての住まいがあった。
「天満宮さんと2人きりになっちまった」
西さんは、顔に深いしわを寄せて、そう笑顔で言った。自宅近くにある古びた鳥居とほこらを、西さんは「天満宮さん」と呼んでいる。月に1度、欠かさず神酒と榊(さかき)を新しくするという。
「前は月に2回だったんだけど、体がきつくてね」
1人きりの集落で西さんはどんな暮らしをしているのでしょう。また、記事の後半では、悲観的ではない村の「終活」に向けた住民の思いを紹介します。
日が暮れると、懐中電灯がな…