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 長引く休校に、オンライン授業を導入している小中学校はわずか数%とのことです。各家庭で通信環境も違えば、パソコンやタブレットなどのデバイスのない家庭も多くあることが原因でしょう。これらの問題を解決して、子どもたちの学びを保障するために、きっと多くの教育委員会や学校現場の先生方が懸命に準備をしてくださっていると思います。

 しかし、子どもの育ちは待ったなし。

 オンライン授業の準備が整うまでに、どんなに早くても数カ月はかかりそうです。学校では、社会性が芽生え、クラスメートと共同して学んでいくこと、けんかもしながら遊んでいたこと、いろんな子どもの個性に触れて世の中の多様性を知ること、そうした多様性の中で折り合いをつけること学びます。これらは、個別の学習で得ることは難しいのです。どんなによい教育動画があっても、やはり誰かとリアルタイムでつながって、交流して、学び合えたらいいと思うのです。ならば、公にオンライン授業や分散登校が始まる前に、仲間内でスタートさせてみてもいいんじゃないでしょうか?

 こんなことをふと思いつき、5月上旬からオンライン小学校を始めてみました。テレビ会議システムzoomを使って、家族ぐるみでつきあいのある8家庭をつないで授業をするのです。

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

 4月の時点でコロナの影響で多くの取引が中止となり、休業に追い込まれていた私。収入激減で弱っていたのですが、「待てよ、昼間、親がこうして仕事を失い、もしくはテレワークなどで家にいる家庭も多いのでは?ってことは、今だからこそ、いい資源が残っているじゃないか。」と視点を変えてみました。そうです。「親」が教師役をすればオンライン小学校ができるのではないか?我が子もずーっと家族以外の人と話していないこの状況で、よく知っている友達の親の授業なら、新鮮で楽しんでくれるんじゃないか?数家族がそれぞれ講師役を提供し合うことで、少ない労力で大きな成果が得られるのではないか?

 そんなことを思いついてしまったのです。

 親のほとんどは教員免許も持ちません。教科書すらまだ配布されていない中、手探りで授業作りが始まりました。「子どもに何を伝えたい?」「集団だからこそできることは?」「お勉強は個別でもできる。教科書に載っていることはいずれ習う。じゃあ、生きていく上で身につけてほしいことは?」みんなでアイデアを出し合いました。親が仕事で専門にしていることを生かしてもよいですし、趣味や特技を生かしてもいいです。ちなみに私たちは、簿記の資格を持つ親に「おこづかい帳のつけ方講座」、楽器演奏が趣味の親に「オンラインセッション」、ホテル勤務の親に「世の中のルールとマナー講座」、システムエンジニアの親に「はじめてのプログラミング」、私からは「子どものための認知行動療法」。他にも「9月入学に賛成か反対か、子どもディベート」「こどものための医学入門」「理科実験教室」「文章の書き方講座」などたくさんのアイデアが出ています。いずれも、オンラインでの集中力のもつ30分~40分程度が目安です。子どもたちを2人1組にして実験の予想をさせたり、意見を話し合わせたりするための機能(zoomのブレイクアウトルーム)も使うと、より共同で学べます。

 軌道に乗ってきたら、子どもたちから発信してもらうのももっといいでしょう。パワーポイントの使い方を教えておいて、自分の好きな分野について調べたことをわかりやすく伝えるのもオンラインでもできます。

 また、生活のリズムを整えるために平日の8時からは朝の会をします。ラジオ体操から始まって、健康観察、今日すること宣言もします。当番で子どもたちに司会をしてもらってもよいでしょう。

 親自身もなかなか大変な時期ですが、できる範囲でできることを。

 最後に、始め方のメモをご紹介します。始めてみたい方の参考になりますように。

 ●オンライン学校始め方のメモ

 ①日時の合う、仲良しのメンバーを決める。親子共に仲良しであること。勤務状況が似ているとさらによし。

 ②メンバーに個別で、企画を打ち明ける。できれば電話で。平日の勤務状況をききだす。在宅の親が多ければ多いほどよい(パソコン操作などの指導の点で)。

 ③賛同してくれたメンバーでグループLINEを作り、そこでパソコンのアドレスをきく。

 ④パソコンのアドレスにzoomの招待をおくる。(企画者はzoomに登録する)

 ⑤zoom接続テスト日を設けて、それぞれつないでもらう。音声やビデオ、画面切り替え、チャット機能などもそこでレクチャーしておく。

 ⑥当日を迎える。

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。