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 新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化したとして、行動制限を大幅に緩和した韓国で、クラブの客を中心とした集団感染が起き、感染者は11日時点で86人となった。多くはソウルやその近郊に住むが、釜山や済州島などにも広がっている。韓国の新型コロナ対策は国内外で高い評価を受けてきたが、政府は規制の再強化を迫られている。

 韓国保健福祉省によると、ソウルの繁華街・梨泰院にある3軒のクラブを訪れた20代男性の感染が6日に判明。ソウル市は計5軒のクラブで感染のおそれがあるとみている。保健当局がクラブの客の名簿を点検したところ、重複を除いて5500人余りの客が特定できた。ただ、連絡先の携帯電話番号の虚偽記載や電話に出ないなど、半数と連絡が取れない状態という。

 今回の感染者のほとんどは20代、30代の若者で、約35%が「無症状」だった。感染後、自覚がないまま暮らしのなかでウイルスを広めるおそれがあるため、「静かな拡大 非常状況」(東亜日報)と懸念が広がっている。

 韓国では、大量のPCR検査で感染者を早期に見つけ出して隔離・治療するとともに、携帯電話の位置情報などによる追跡で接触者を割り出し、感染拡大を防ぐことを防疫の柱とする。ただ、そもそも連絡先が特定できなければ、追跡も難しい。

 今回の事態に、ソウル市は9日、クラブなどの遊興施設に事実上の営業禁止に当たる集合禁止令を出した。ソウル近郊の京畿道も10日、クラブの客に検査を義務付け、人と接触しないよう求める行政命令を出した。教育省は11日、段階的に13日から行うとしていた学校の登校再開を1週間、延期すると発表した。

 韓国では流行が下火になったことを受け、4月20日から、名簿の作成や発熱チェックを条件にクラブなど遊興施設の営業を再開。政府は6日から「社会的距離の確保」と呼んでいた行動制限を緩和させていた。国内の新規感染者は5月に入って9日まで1ケタ台がほとんどだった。ただ、今回の集団感染を受けて10、11日と連続で30人台となっている。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は10日の就任3年の演説で集団感染に触れ「防疫の手綱を緩めてはいけない」と強調しつつ、「韓国の防疫体制は油断しなければウイルス拡散をコントロールできる」と語った。(ソウル=神谷毅)