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 慣れ親しんだ都内を離れて、高齢者に地方へ移り住んでもらう。これは本人にとっても、都会の自治体にとっても望ましい「ウィンウィン関係」なのか――。区役所から200キロ余り離れた場所に、東京都杉並区が建てた特別養護老人ホームを、記者が今年2月に訪ねた。

 高齢者の急激な増加により、受け入れ施設が足りない。新しく建設したくても地価の高騰に阻まれる。そんな悩みを持つ都心の自治体の一つ、杉並区が静岡県南伊豆町に特別養護老人ホームを建設したのは、一昨年のことだ。

 都道府県の境を越え、自治体が共同で整備した全国初の「区域外特養」である。膨れあがる都心の高齢者を地方に送り出すという「妙手」が全国の自治体に注目された。

拡大する写真・図版東京都杉並区と静岡県南伊豆町の自治体連携で設立した特別養護老人ホーム「エクレシア南伊豆」。エクレシアはギリシャ語で「人々の自由意思で集う場所」を意味するという=2020年2月18日、静岡県南伊豆町

 杉並区から車で4時間近く、伊豆半島の南端に南伊豆町はある。

 町役場の近くに立つ特養「エクレシア南伊豆」は3階建てのモダンなデザインで、内部には木材が多く使われている。入所者と面会する家族のための宿泊室も備えている。

 個室で過ごしていた淡路米子さん(90)は、開所した2018年3月に杉並区民として入所した。

 「食事もおいしいし、職員の方にもよくしてもらっている」。この施設を選んだ理由について「長男が調べてくれた」と言うが、入居するまで町には縁もゆかりもなかった。

都会で急増する高齢者を地方で受け入れる―。記事の後半では、ウィンウィンに見える計画の実態を追います。

 東京・浅草に生まれた。子ども…

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