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 新型コロナウイルス感染症の影響で魚介類の価格が低迷するなか、伊勢湾漁業協同組合(三重県伊勢市)は設備投資にあえて踏み切ることにした。「災い転じて福となす」を思い描き、干物の製造と魚介類を真空パックにする設備を新たに導入する。

 伊勢湾でとれる新鮮な魚介類を扱う漁協にとって、高級魚が水揚げされる春先はかき入れ時だ。飲食店や宿泊施設に卸されることが多いマダイやスズキなど、高値で取引される魚の季節だが、今年は例年と様相が異なった。

 コロナ禍で飲食店などは軒並み営業を自粛し、大口消費先でもある学校給食はストップ。魚介類が余り、浜値が普段の半分以下になるものもあった。

 魚をとっても売れないため、4月上旬以降、マダイなどを狙う底引き網漁船は出漁していない。漁協の黒田秀夫参事は「ここ数十年で、これほど長く漁が止まったのは初めてだろう」と話す。

 漁協の正組合員は100人ほど。平均年齢は70歳に迫る。漁協の経営も決して楽ではないが、杉田英男組合長は「ただ黙っていても事態は好転しない。ピンチだからこそ何かをするべきだ」と考え、新たな設備の導入を決断した。

 漁協は、冷蔵車を使った新鮮な魚介類の移動販売をしていて、売れ残りをどう扱うかが課題だった。廃棄を極力減らして、有効活用するにはどうすればいいか――。活路を見いだした先が、消費期限が大幅に延びて、新たな販路が見込める干物と真空パックだった。

 干物や真空パックは、魚介類を競り落とした業者が作ることが多い。漁協が干物などを作るケースは珍しいというが、杉田組合長は「消費者からみれば、漁協が作った商品には安心感があると思う。付加価値があることで、漁師の収入増にもつながる」とメリットを強調する。

 伊勢市も漁協の判断を後押しする。両方の設備を導入するには約300万円の費用が必要だが、緊急コロナ対策事業として、市は150万円を補助する。

 新たな設備は、早ければ夏前に導入される予定だ。杉田組合長は「コロナ禍のせいで、今は確かに苦しいとき。小さな漁協かもしれないが、苦しいからこそ漁業と漁師の暮らしを守っていく責任がある」と話す。(安田琢典)

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