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 博物館や大学などに所蔵されている植物の標本。DNAを調べようとしたとき、これまでは押し葉の一部をすり潰さないといけないことが多かったが、国立科学博物館(科博)と福島大が、標本に溶液をのせるだけでDNAを抽出できる手法を開発した。貴重な標本からもDNAを抽出できるようになり、研究が加速すると期待されている。

 植物の標本のDNAはこれまで、一部を切り取ってすりつぶし、溶液に浸して取り出すのが一般的だった。しかし、標本は、同じ状態を長く保っておくことが求められる科学的な証拠。科博植物研究部多様性解析・保全研究グループの遊川知久グループ長は「標本の保管とDNA研究の間には軋轢(あつれき)があり、破壊を伴う利用は断られることが多かった」と語る。

拡大する写真・図版トネハナヤスリの葉にピペットで溶液をのせ、DNAを抽出する様子

 そこで科博が福島大と共同で開発したのが、標本を壊さずDNAを抽出する新しい手法だ。DNAを溶液に溶け込ませるのはこれまでと同じだが、葉などをすりつぶすのではなく、溶液を標本の上にピペットでのせて30分放置し、回収するだけ。その後、DNAをPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で増やして解析する。溶液がのった部分にはその後、吸湿紙をあてて乾燥させれば外見上の変化は見られないという。

 科博の杉田典正・非常勤研究員によると、溶液に含まれるのはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、プロテイナーゼKなど、DNAを保護したりpHを調整したり、たんぱく質を分解したりする薬品。実は、昆虫のDNAを標本を壊さずに抽出する先行研究があり、植物で使える条件を工夫したという。シダや単子葉類、双子葉類など14種の植物標本で、二つの遺伝子領域(matKとrbcL)のDNA配列を調べて、うまくいくことを確かめた。杉田さんは「使うのはDNAを扱う実験室なら必ずあるような薬品ばかりで、極めてシンプルだ。植物にはPCRの反応を阻害する物質が含まれるが、すりつぶさないことで、これらの物質が溶け出しにくい利点もある」と説明する。

拡大する写真・図版標本にしたヤクシマアリドオシラン。矢印の葉からDNAを抽出した後も外見は変わらない=科博提供

 ただ、葉の上に溶液をのせるだけではDNAを十分抽出できない場合もある。そんなときでも切り取った葉を液に浸せば、すり潰さなくても抽出でき、その後、葉を元の場所へ貼り戻したり袋で保管したりすれば形態の情報を失わずに済むという。

 科博の遊川さんは「これまでよりはるかに短時間、低コストで、標本を壊さずにDNAを抽出できる。標本だけでなく、生きた植物のDNAを調べられるというメリットもある」と話した。この成果は日本植物学会の英文誌Journal of Plant Research(https://doi.org/10.1007/s10265-019-01152-4別ウインドウで開きます)で発表された。

 DNAの調査から、絶滅したと…

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