「忘れるだろう、でもコロナは再び来る」高橋源一郎

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高橋源一郎氏
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 イタリアの作家、パオロ・ジョルダーノは新型コロナウイルスが母国でも大きな問題になりはじめた頃、手記を書き出し、その1回目に、こう記した。

 「今日は、珍しい二月二九日、うるう年の二〇二〇年の土曜日だ。世界で確認された感染者数は八万五千人を超え、中国だけで八万人近く、死者は三千人に迫っている……」

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感染拡大で外出できなくなり、自宅近くの仕事場にこもる時間が長くなった高橋源一郎さん。写真はすべて高橋さんに撮ってもらいました。スマホでの「自撮り」も=神奈川県鎌倉市(画像の一部を加工しています)

 そして、ウェブで公開されている世界の感染状況を集計した地図を目の前の画面に開きっぱなしにしてある、と彼は付け加えた。

 パオロ・ジョルダーノのように、ぼくが、画面で開きっぱなしにしている「リアル・タイム・カウンター」も、世界の最新の感染状況を24時間、地図とグラフと国旗と数字で表示しつづけている。いまは5月10日日曜日午前9時31分、彼が手記を書いてから2カ月と10日ほど後。

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世界の感染状況を示すパソコン画面=高橋源一郎さん撮影

 多くの人たちの生活はすっかり変わってしまった。他の人間との接触は制限され、外出することもできず、家に閉じこもる。ひとりの時間が生まれる。あるいは、逆に、それまで、ほとんど向かい合わなかった家族と真正面から向かい合わねばならない時間も。

 いま世界の感染者数は4099823人、死者は280372人である。

時間が突然生まれた

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高橋さんが今回の執筆のために読んだ本の一部=高橋源一郎さん撮影

 ずっと本を読んでいる。以前…

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