宮城県名取市立相互台小の6年生の担任、武山幸一郎先生(45)は、休校中の児童に向けアニメーションの授業動画を制作し、ユーチューブで配信している。iPhoneの新機能を駆使し、先生や児童のアバター(分身)たちが、一緒に算数の問題を考える。
登場するのは、オリジナルの「僕創(ボクツク)」先生と、動物たちのキャラクターだ。iPhoneX(テン)以降に搭載されている「アニ文字」「ミー文字」機能で、表情豊かにしゃべる。武山先生が吹き込み、ボイスチェンジャーで使い分けている。
僕創先生は動画の最初、「じっくり考える時間、自分の言葉で表現する時間が必要なときは一時停止してね」と呼びかける。最後には「きょうの授業でわかったこと、考えたことをノートに書いて」。フクロウやウシ、ブタくんたちと話し合いながら、問題を解いていく。
6年生の算数の最初の単元「対称な図形」10時間分を、ユーチューブチャンネル「僕と一緒に授業を創ろう」(https://www.youtube.com/channel/UCfM5R3YH4J5TWG9MXBnWayw)で、4月中旬から順番に配信。保護者からは「子どもはプリントよりもテンションがあがる」などと感想が来た。市内の教師の間で評判が広がり、1時間目は2千回以上再生された。
各地で取り組みが始まっている授業動画の配信。多くは教師が黒板を前に講義するのを録画・配信する形だが、武山先生は「一方通行の講義形式の動画だと、限界がある」と言う。実際の教室ではみんなと対話しながら進めるのが基本で、動画にも教わる子ども役が必要だと考えた。
動画をつくることで、教室での授業のあり方を見直すきっかけにもなるという。学校が再開した後も、家庭学習の教材や教師仲間の研修用に使えないか、思案中だ。
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休校中の家庭学習を助けるため、にわかに注目されているオンライン授業。だが、環境が整っているとはいえない。
昨年3月の文部科学省の調査によると、県内の公立小中高校では、コンピューター1台あたりの児童生徒数は5・4人で、全国平均と同じだ。七ケ宿、蔵王、女川町が3人以下で1台と充実する一方、利府町14人、多賀城市10人と地域差が大きい。ウェブ会議システム「Zoom」などを使った双方向型の授業は、1人1台を配れる私立校に限られる。
一部の教師が動画配信に取り組むほか、外部サイトのリンクを家庭用に紹介する学校もある。ただ、スマホの有無や通信環境の違いもあり、全家庭に公平とはならない。相互台小の武山先生は「授業動画はあくまで補充のため。学校再開後、単元を一からやるのは変わりない」としている。(石橋英昭)
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学校に通えなくなって2カ月が過ぎた。オンラインでの取り組みが広がる一方で、不安を抱えたまま開校を待つ子どもたちも多い。教育現場の今を追った。
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