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 新型コロナウイルスの集団感染が発生した札幌市の介護老人保健施設「茨戸(ばらと)アカシアハイツ」。14日、新たに2人の入所者が亡くなり、死者は10人になった。施設に残る入所者の半数以上が感染しているが、さらに感染者が増えており、隔離が必ずしもうまくいっていない実態が浮かんだ。

 市によると、14日に入所者4人の感染が新たに確認され、感染者は入所者64人、看護や介護の職員ら17人の計81人にのぼる。

 運営する社会福祉法人札幌恵友会によると、4月21日、介護老人保健施設(老健)と1階でつながるデイケアセンターで1人の感染が判明。施設間で職員や入所者の行き来は頻繁ではなかったが、同じ休憩所やトイレを利用することもあった。21日以降は出入りを禁じたが、26日に初めて老健の入所者の感染が判明すると、一気に広がった。

 2階建ての施設は、2人部屋8室と4人部屋21室。5月14日現在、施設に残る75人のうち44人がPCR検査で陽性判定を受けた。最初の感染者が出た翌日の4月27日から、陽性の人は2階、陰性の人は1階に分けた。ただ、部屋の出入り口はカーテンで仕切られているだけで、食事は各階の食堂で一緒にとる。1階の人が発症して陽性とわかり、2階へ移されるケースも出ている。看護職員は1、2階とも担当しているという。

 市保健所の三觜(みつはし)雄所長は「感染者の発生状況から見ると、隔離が十分機能していないのではないか、との反省はある」と認める。同会と相談しながら、隔離の徹底を検討するという。

 感染者の入院先を探している間に死者が続出している。12日に初めて1人が入院したが、14日までに入院できたのは計6人。だが、三觜所長は「施設内で療養が難しい場合は入院を調整する方針に変わりはないが、介護が必要な人が多く、病院に介護力を期待するのは難しい面もある。今の環境を保ったまま、外から医療を支援するという形で対応している」と話す。

 看護や介護の職員については、厚生労働省の定める配置基準が34人のところ、10人以上不足している状況だ。運営法人によると、入浴介助が十分にできず、食事の回数も2回に減らしているという。

 運営法人は、陰性の人を法人内の別施設に移すことも検討する。「このままではマンパワーが足りない。感染を広げないためにできるだけの措置をとりたい」としている。

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 介護が必要な高齢者がリハビリを受けながら自宅復帰を目指す介護老人保健施設は、道内に193カ所ある。1988年に前身の制度で施設の運営が始まり、2000年の介護保険法の施行時にはすでに道内に126カ所あった。

 同法が05年に改正されると、「ユニット型」と呼ばれる老健が登場した。それまでの「従来型」には4人部屋や2人部屋があり、食事も比較的大人数で取っていたが、ユニット型の居室は原則個室で、10人以内の少人数の単位で生活する。施設内でも家庭的な雰囲気で過ごしたいとの声に対応するのがねらいだった。ただ、193カ所の老健のうちユニット型は27カ所にとどまる。比較的新しくできた老健でも従来型の施設がある。

 ユニット型の登場後も、従来型が多いのはなぜか。一つは利用者負担の違いがある。札幌市内で従来型の4人部屋や2人部屋を利用する場合、介護サービスの利用料や食費を含めた1カ月の標準的な利用者負担は8万円前後。これに対し、ユニット型では5万円ほど高い13万円前後かかる。このため、従来型にも根強いニーズがあるという。

 茨戸アカシアハイツは従来型の施設で、「個室がないため、感染者の隔離が難しかったのかもしれない」とみる介護関係者もいる。

 老健など介護施設の入所者には一定程度、認知症の高齢者が含まれる。静かにしていることが苦手な人や歩き回る習慣がある人もいる。このため入所者が病気になっても症状が重くならない限り、治療の妨げになることなどを恐れる病院側から入院の受け入れを拒まれるケースは、平時でも珍しくないとされる。

 老健など介護施設では、身体的拘束は緊急やむを得ない場合を除いて禁止されている。ある特別養護老人ホームの施設長は「施設としては入院で身体拘束されるのが心配なのかもしれない」としつつ、「陽性の人はしっかり医療を受けられるよう入院して陰性の人と分け、みんな安心して暮らせるようにしたいと思っているではないか」と話す。(原田達矢、芳垣文子、片山健志)

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 <介護老人保健施設> 介護保険で利用できる4種類の施設サービスの一つ。「老健」と略称で呼ばれることが多い。常勤医師が1人以上いることなどの条件がある。病状が安定し、リハビリに重点を置いたケアが必要な高齢者らが主な入所対象で、回復後は自宅復帰を目指す。退所して自宅で生活できるかどうか、少なくとも3カ月ごとに医師や介護職員が検討するが、厚生労働省の2016年の調査によると、全国の入所者の平均在所日数は299・9日にのぼっている。

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