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 長野県など39県で緊急事態宣言の解除が決まった14日、諏訪地域で三つの旅館・ホテルを経営する井口本社の井口恒雄会長(84)が朝日新聞の取材に応じ、現在の苦境と今後への期待を語ってくれた。

 井口さんは諏訪市の「RAKO華乃井ホテル」と旅館「浜の湯」、下諏訪町の旅館「聴泉閣かめや」の3施設を経営。合わせて部屋数は223に達する。5月末まで休業予定だったが、宣言解除の動きを受けて20日からの再開を決めた。

 再開といっても売り上げを期待してではなく、井口さんは「環境づくりのため」と話す。「開けることでお客さんが来る気になってくれれば、と。予約があるわけじゃないので売り上げは期待できません」

 宿泊予定者の健康状態を事前にチェックし、全員に個室で泊まってもらう。食事も個室。できる予防策を取って再開するが、「宿泊客の50%は東京を中心とする関東圏。肝心の東京周辺はまだ緊急事態宣言が続いているので受け入れられませんし……」。

 開けても期待はできないが、閉めていればなんとかなるわけでもない。こうしたジレンマの中、重くのしかかるのは経費だ。

 井口さんは「テレビCMなどは取りやめたが、削減は月に数百万円。それに対してかかる固定費は月に数千万円」と明かす。最も大きな経費は人件費。「雇用調整助成金として国から入るのは1人1日8330円。到底足りないのでほぼ同額を会社が負担します。それが月に2千万円」。電気や水道、温泉の代金を加えると「キャッシュで出て行く分だけで月に3、4千万円かかる」と話す。

 冷蔵庫は動かさないといけないし、コイの泳ぐ池を維持するだけでも電気代、水道代がかかる。「無利子融資が国と自治体で上限5千万円ありますが、焼け石に水。当然、利息のつくお金を借りなきゃいけない。金利がのしかかるわけですからね。苦慮しています」と打ち明ける。

 状況は2008年秋のリーマン・ショックよりもはるかに厳しい、と井口さんはみる。「50年商売やってきて売り上げゼロって初めて。みんな初めてだと思います。リーマンはうまく切り抜けられたけど、今回は切り抜けられない企業が増えるのではないか」

 井口さんは「V字回復は無理。3年で元に戻ればいいのかなと思う」と展望を示す一方、「今後、旅行(観光)のマーケットは小さくなる」と予想している。(依光隆明)