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 新型コロナウイルスによる県内のホテルや旅館、観光施設への休業依頼が15日で解かれ、一部の施設は16日の再開に向けて動き出した。一方で、県は東京など特定警戒の都道府県からの誘客をしないよう求めていることから、再開を見送る施設も多い。(松下和彦、羽場正浩、遠藤和希、滝沢隆史)

 「これ以上休んだら社員の意欲が低下する。4人いる新入社員も接客レベルが上がりませんし……」

 松本市の奥座敷、浅間温泉。27軒ある旅館は4月からほぼ一斉に休業してきたが、16日から宿泊の営業を再開するホテル玉之湯の女将(おかみ)、山崎圭子さん(61)は言う。

 40人近い従業員を抱え、月3千万円程度の収入がないと経営は立ちゆかない。日帰り入浴や料理のテイクアウトなどで細々と営業を続けてきたが、この1カ月間で1500人以上の宿泊客がゼロになり、国の雇用調整助成金や市の特別資金でしのいできた。

 ただ、再開しても予約は今のところ1日2~3組程度。マスク着用や手の消毒、入館時の検温などへの協力を確認したうえで予約を受けている。山崎さんは「夏場には少しは回復していることを期待したい。それまでは我慢して、お客様にくつろいでいただけるよう一生懸命やる」。

 昨年10月の東日本台風で1階部分が水没した「豊野温泉 りんごの湯」(長野市)。エレベーターや、源泉を2階に引き上げるポンプなどが使えなくなり、被害額は約1億2700万円に及んだ。施設で働くスタッフらも被災した。

 地域やボランティアの支えで同12月に温泉と食堂の営業を再開したが、新型コロナの流行で再び4月13日から休館を余儀なくされた。16日の再々開を前に、責任者の宮腰貴洋さん(36)は「再開を待ち望んでくれている人も多い。復興に向かっていく姿を見せたい」と前を向く。

 道の駅も順次、営業を再開する見通しだ。地場の山菜が人気で年間約40万人が立ち寄る「信州新町」(長野市)は、16日から約3週間ぶりに開く。「コロナが終息したわけではなく、第2波、第3波が心配。すぐにお客さんは戻らないかもしれないが、徐々に平常に戻ってくれれば」と運営会社の小林久一代表(72)。

 テナントのそば店は、約1カ月の休業期間中、宅配やテイクアウトでしのいだが、売り上げは9割減。再開前よりも客席を3分の1ほどに減らし、使い捨ての紙コップを準備するなど感染防止に気をもむ。店主の男性(34)は「店を開けられる喜びはもちろんあるが、安心して食べてもらえるよう対策を徹底しなければならないという気持ちの方が強い」と話した。

 一方、4月10日に阿智村が独自に営業自粛を要請した昼神温泉。中京圏などの県外客がほとんどを占め、5月いっぱいまでの休業を決めた。地元の観光局はすべての宿泊施設に非接触型体温計を配り、37・5度以上の発熱があれば宿泊を遠慮してもらうなど、感染防止策の徹底を進める。

 客室数77の昼神グランドホテル天心も6月から再開する。「3密」を避けるため、客室の稼働率を最大6割程度に、85席あるレストランも50席程度に抑える。客室での呈茶に代えてロビーでドリンクを提供するなど接客も見直す考えだ。今井竜也社長は「(新型コロナによって変わった)世の流れとお客様の望むものを見ながら、10年先を見すえてやり方と体制を変えていきたい」と語る。

 ただ、県が求めても「県外客を区別することは難しい」(松本城管理事務所)のが実情だ。茶臼山動物園や奥裾花自然園など、長野市の多くの観光施設は休業を31日まで継続。県信濃美術館東山魁夷館(長野市)などの県有施設のほか、松本城の天守なども16日からの再開を断念した。