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 あの柔和な語り口が耳に染みついている。私の朝はラジオから聞こえる、一人の音楽学者の声で始まった。平日は「バロック音楽のたのしみ」の典雅な古楽の調べとともに、日曜の「音楽の泉」はシューベルト「楽興の時」第3番のメロディーに乗って。

 立教大名誉教授で中世・ルネサンス音楽研究者の皆川達夫さんが4月、老衰で亡くなった。92歳。

 私たちを名曲の世界にいざなってくれた恩人であるとともに、「かくれキリシタン」が口伝してきたオラショ研究者の顔もあった。オラショとは、キリスト教が禁じられた近世の禁教期、潜伏した信者たちが口ずさんだ祈りの文言だ。かつてイベリア半島で歌われたローカルな聖歌の断片が長崎の小島で命脈を保っていた事実を発見した人だった。

 「いわば失われた『おらが村』…

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