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 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、政府が取りまとめた緊急経済対策は総額117兆円にのぼる。対策を盛り込んだ補正予算が先月末に成立したが、学生や事業者などへの支援が不十分だとして、国会では早くも「第2次補正」の議論が始まった。成立した補正の中身は、本当に急いで必要とされる予算ばかりだったのか。

 緊急経済対策の117兆円には、企業に対する納税や社会保険料の支払い猶予分、後から返済を求める融資などが含まれている。実際に国が新たに直接支出する額はずっと少なく、今回成立した補正予算は一般会計の総額で25・7兆円だ。

 補正の柱は、「一律10万円」などの個人や事業者への給付金、資金繰りへの支援など計19・5兆円と、医療体制の整備や地方自治体への臨時交付金など、感染防止対策の費用1・8兆円。さらに目を引くのが、「コロナ収束後」に観光やイベント、飲食業を支援するキャンペーンの事業費、1・7兆円だ。

 「簡単に言うと旅行代が半分になるイメージです」

 国土交通省の担当者がそう説明するのが、「Go To Travel キャンペーン」。旅行業者などから旅行商品を購入すると、代金の2分の1にあたるクーポン(1泊あたり上限2万円)がもらえる。うち7割を旅行商品そのものに、残る3割はお土産の購入などに使えるという。

 キャンペーンはほかに「Eat」「Event」「商店街」がある。「Go To Eat キャンペーン」では、グルメサイトなどで飲食店を予約すると、最大1千円分のポイントがもらえる。

 国会の予算審議では「優先順位が違う」「非常事態にのんきにお金をつけている場合か」と野党が反発。安倍晋三首相は「事業継続への意欲を持ってほしいという観点から盛り込んだ」などと答弁した。

 しかし、企業が直面するのは収束まで事業が継続できるかという問題。キャンペーンのタイミングを見誤れば、ウイルス拡散に再び火をつけることにもなりかねない。経済産業省の担当者は「開始は感染症の専門家の意見を頂いて検討したい」とするが、別の省庁からは「収束が見極められない状態が続けば、1兆円超のお金が塩漬けになる恐れもある」との声も聞こえる。

 農林水産省が収束後の観光回復を見越して盛り込むのは、「公共施設等における花きの活用拡大支援事業」、つまり花の消費を増やそうという取り組み。予算額は約32億円。

 事情はこうだ。

 かき入れ時だった3、4月の卒業・入学シーズン、学校は休校し、イベントは自粛。「切り花の価格は平年より3~4割ほど下がっている。かつてない事態」(農水省の担当者)

 そこで、収束後は学校や観光地、駅、空港などに花を飾り、戻ってきた来日観光客らに日本の花の魅力をPRする。特に力を入れるのが「和の空間」の提供。組み立て式の茶室のような設備を主要な空港や駅などに設置し、生け花を展示したり、茶道を実演したりするという。担当者は「訪日客に『日本の花っていいよね』と思ってもらえれば、将来の輸出拡大につながる」と話す。

 元厚生労働省キャリア官僚で神戸学院大の中野雅至教授(行政学)は「緊急にお金が必要なところをもっと深掘りすべきでは。大学には奨学金に依存する学生も多く、アルバイトもなくなって学費の工面に悩む子もいる。すぐに使えない予算があるのは疑問だ」と指摘する。