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 新型コロナウイルスの感染者が使用する病室に続く通路の入り口は、天井から床まで届く飛沫(ひまつ)防止のビニールカーテンで仕切られていた。ナースステーションに目をうつすと、看護師らが忙しそうに行き交う影が、半透明のビニール越しに見えた。

 茨城県取手市の取手北相馬保健医療センター医師会病院。 4月下旬から患者4人を受け入れている。鈴木武樹病院長は「うちは感染症の指定病院ではないが、思いつく院内感染対策は何でもとっている」という。

 新規感染者が減り、社会は普段の生活に戻っていっているが、ウイルスと向き合う医療の最前線は警戒態勢が続く。

 この病院にコロナ禍が降りかかったのは、20床の緩和ケア病棟の準備中だった。急きょ、この病棟を感染症専用に切り替えた。

 大きかったのは、地域の中核病院である「JAとりで総合医療センター」(取手市)が、院内感染により、外来や救急の受け入れを一時停止したことだ。周囲の病院が、患者や救急を受け入れて助け合った。

 感染者の治療や看護は、医師3人と志願した看護師13人らが交代で担っている。病室に向かう際にはマスクを2重に着け、全身をガウンなどで隙間なく覆う。ウイルスを周りに散らさないよう、防護具を脱ぐときに最も気をつかう。

 「どんな状況で感染するか分からないのが不安だが、高い職業意識で立ち向かっている」と藤田あけみ看護部長は話す。家族にうつさないよう帰宅を控えている者もいる。終わりが見えないことが、精神的な負担になっている。

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 県によると、新型コロナウイルスの感染者を、13の感染症指定医療機関を中心に計28病院で受ける構えをとっている。すぐにでも使える病床は計151床。うち30床が重症患者向けで、重篤な肺炎を治療する上で最後のとりでとなる体外式膜型人工肺(ECMO〈エクモ〉)はコロナ用に7台ある。

 3月17日に初めての陽性患者が見つかって以来、県内では今月17日までに168人の感染が確認された。最近では退院が相次ぐ。

 県の入院調整本部は、さらに入院患者が減れば、指定病院のみの受け入れに戻していく方針だ。安田貢(すすむ)医療統括監は「設備を持たない病院では院内感染のリスクが高いし、非コロナの医療への影響を避けないといけない」という。

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 古河市の古河赤十字病院の玄関では、フェースシールド姿の職員らが来院者の検温をしていた。壁には「当院で院内感染は発生しておりません」と赤い文字。ものものしい雰囲気をいぶかって問い合わせが来るための貼り紙だという。

 多くの発熱患者を診察してきた発熱外来は手際が良い。感染の疑いがある人が来院すると、建物外で車椅子でCT検査へ。肺炎の有無を確認し、ウイルスが外にもれないよう気圧を低くする陰圧装置のある部屋で検体を採取する。その間、院内に続く通路をついたてで仕切り、職員が立つ。

 感染症指定医療機関である同病院は、これまで計12人の陽性者を受け入れた。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で感染した人に始まり、認知症の高齢者を含む家族4人など来歴は様々だ。近藤泰雄副院長は、確たる治療法がないなか、手探りで患者に向き合ってきた。現在も入院するのは肺炎の症状がある中等症の1人。

 院内感染については、マスクをしていれば簡単にはうつらないウイルスの性格がはっきりしてきたとして「過剰な対策は必要ない」と冷静に構える。気になるのは、過度に怖がる人が世の中から減らないことだ。

 4月中旬、高齢の患者が亡くなった。遺体を特別な袋に収めて対策をとれば感染の危険性は低いとされるものの、受け入れてくれる葬儀場は少ない。病院職員が葬儀社や火葬場探しを手伝った。ほかに病室内の掃除やリネン類の洗濯を嫌がる業者もいて、病院側の負担増になっている。

 近藤副院長は「感染の第2波、第3波が予想されるなか、そこまで心配する必要はないことを一般の人にも徐々に理解してもらいたい」と話した。(庄司直樹)