死を待つだけだった母 9日間で奪われた家族3人の命

有料記事新型コロナウイルス

津阪直樹
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 オランダの家族3人が新型コロナウイルスに感染し、命を落とした。70代の母は持病のため救命治療を受けられないまま、息を引き取った。健康だった息子も医師が最後は治療をあきらめた。わずか9日間で家族3人の命を次々と奪った。残された娘は「最後に肌に触れられないことがこんなにもつらいとは思わなかった」と嘆いた。

「治療できない」 受け入れた母

 亡くなったのは、マリア・ルシウスさん(74)、息子のサミー・ラマダノヴィッチさん(43)、マリアさんの兄のヤン・ルシウスさん(82)。3人はオランダ南部にある人口約1700人のフォルステンボシュ村で暮らし、毎日のように顔を合わせていたという。

 取材に応じたマリアさんの娘アナ・ラマダノヴィッチさん(42)によると、マリアさんと兄のサミーさんはほぼ同時に体調悪化を訴え始めた。3月上旬、マリアさんに電話をすると「風邪をひいてしまったようだ。下痢も続いていて不調だ」と訴えた。サミーさんも「体調を崩しているらしい」と聞いた。当時、イタリアを中心に欧州で感染の拡大が分かり始めていた。オランダでの感染者は400人ほどだったが、この頃から急激に増加していた。

 アナさんがサミーさんを見舞うと、想像以上に病状は悪かった。電話の4日後、かかりつけ医のところへ連れて行き、肺や血圧を検査してもらったが、異常はなかった。医師は「コロナかもしれないし、違う病気かもしれない。今は検査に余裕がないため、できない。とりあえず肺炎として抗生物質を出す」と言われたという。

 2人の体調はその2日後の3月16日、急変。救急車で病院に運ばれた。サミーさんは体に力が入らなくなり、床に倒れたという。

 母のマリアさんは2年前に心…

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