バンコク=乗京真知
拡大するタイ中部チョンブリ県の寺「ワット・セーンスック」には、生前にあやめた動物の頭がついた状態で、地獄をさまよう死者の立体像が並んでいた=2020年1月15日、乗京真知撮影
仏教の信仰があついタイには、各地に「地獄寺」と呼ばれる寺がある。境内にはドクロを持ったえんま様や釜ゆでにされた死者の立体像などが並び、地獄を模した空間が広がる。寺は「あの世」の恐ろしさを伝えることで、信徒に何を訴えようとしているのか。
タイでは地獄のことを「ナロック」と呼ぶ。日本でいう「奈落」のことで、仏教のふるさとのインド方面からもたらされた言葉だという。タイには奈落の存在を信じる人が多い。
タイの地獄表現の多彩さに着目し、美術史の観点から分析したのが早稲田大学大学院博士課程の椋橋彩香(くらはし・あやか)さんだ。各地を訪ね歩いた椋橋さんは、2018年に解説本「タイの地獄寺」(青弓社)を出版した。
今年1月、この本を片手に、まずは地獄絵を観察しに行った。首都バンコクにあり、外国人客も多いワット・スタット(ワットは「寺」の意)。金色の大仏が鎮座する本堂を見て回ると、大仏の後ろの柱に地獄絵があった。
一番目を引いたのは「地獄釜」だ。バスタブほどの大きさの釜で17人がゆでられ、18人目が投げ込まれる場面が描かれていた。よく見ると、薪の代わりに人の手足がくべられているではないか。生前に僧侶や動物をたたいた者への罰だという。
拡大するタイの首都バンコクの寺「ワット・スタット」の柱にある地獄絵。死者が釜ゆでにされたり、舌を引き抜かれたりする場面が描かれていた=2020年1月5日、乗京真知撮影
「トゲの木」に登る男女も描か…
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朝日新聞国際報道部