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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた休校が続く中、熊本県高森町立の小・中・義務教育学校では学校と家庭をオンラインで結んだ双方向の遠隔授業をしている。町は児童・生徒1人につき1台貸与しているタブレット端末を活用した学習支援や授業を3月から試行してきた。

 4月下旬。高森中3年の社会科では、前の授業で学んだ第1次世界大戦を念頭に、教室にいる教員が「長く続いた戦争の影響を考えてチャットで送って」とテレビ会議システムを通じて自宅にいる生徒に呼びかけた。すぐに生徒たちから「戦勝国と敗戦国で経済状況が偏ったのでは」「女性も工場で兵器を作らされ、不満がたまったと思う」などとキーボードで打ち込んだ返信が集まった。

 入学したばかりの1年生は美術の初授業をオンラインで受けた。教員から「デッサンを正確に描くために大切なことは?」と問われ、画面越しに次々と手を挙げて「影」「光」「明暗」「気持ち」「立体感」と答えを寄せた。

 町では2013年から総務省の事業や町独自の予算でタブレット端末を導入。全児童・生徒に行き渡らせ、教科書や教材を配信して授業で使うほか、プレゼン資料の作成や家庭学習に活用している。

 休校が延長された3月中旬から、通信環境が整っていない家庭にWiFiルーターの配備や光通信網の宅内引き込み工事をし、オンラインでの双方向の学習を試行した。

 新年度も県教委の要請を受け4月15日から休校を続ける中、小学4年以上でオンライン授業を正式に開始。高森中での最初の週は1学年2クラスで一緒に授業をし、6限目までしたが、50人近くの生徒の顔を見るのは大変で、生徒たちも端末を見続けることで目などに負担が生じた。そのため、2週目からはクラスごとに、1時間休みを挟みながら1日3教科の授業にした。

 家庭学習について、3年生の生徒の1人は「1人の時は集中が途切れないよう、途中で休憩を入れたり携帯に触らないようにしたりと工夫しているけど、オンラインで授業があるのは助かる。みんなの元気な姿も確認できてほっとする」と話す。

 教員たちも工夫している。数学を教える北原賢二さん(52)は「生徒は自分が分からないことを隣の子に聞くといったことができず、教室の授業より難しい。問いかけを増やし、分かったらジェスチャーでサインを送ってもらうなどしながら、皆の表情を見るようにしています」

 美術教諭の山嵜桃子さん(26)は「しっかり耳を傾け、問いかけに声を出して応えてくれる」とオンラインでの生徒の様子に手応えを感じながら、「実際に制作する時は、遠隔では手元の様子が見られない。休校期間が延びた場合は、作品を見せてもらう方法なども考えなくては」と話した。

 子どもの少ない山間部の高森東学園義務教育学校では、一部の教科で在宅勤務の教員によるオンライン授業も試行しているという。町教委の担当者は「タブレット端末のこんな使い方は想定していなかったが、ノウハウが蓄積できれば雪や台風による休校時も活用できる」と話す。(後藤たづ子)