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 全国高校野球選手権大会も、その代表を決める宮崎大会も中止が決まった。「夏の甲子園」。幼いころからそれを目標に練習に励んできた選手は少なくない。最後のチャンスを失った3年生や指導者の間には落胆や戸惑いが広がった。

 2018年春の選抜大会、昨年は夏の甲子園に初出場を果たした富島。3年生が引退後の新チームで臨んだ昨秋の九州地区高校野球大会県予選でも優勝するなど、夏の甲子園出場の有力校の一つだった。

 午後4時、甲子園中止の速報が伝えられると、浜田登監督が40人あまりの部員を集めて大会の中止を伝えた。浜田監督は「甲子園という大きな目標が無くなってむなしさや悔しさがあり、納得できないかもしれない。ただ、命を最優先するための決定でやむを得ない」と諭した。

 部員たちはこの日に部活動を再開したばかり。複雑な表情で監督の話に聴き入った。黒田直希主将(3年)は「残念です。長い休み期間で緩みがあったが、『甲子園はある』という思いで、3年生が中心になって引き締めたところだった。ないものねだりをしても仕方がない。それぞれ次の夢に向かって頑張りたい」と話した。

 昨夏の甲子園でマウンドに立ったエース富井大輝選手(3年)は昨年よりも筋力をつけ、変化球や直球に磨きをかけてきた。「悔しい気持ちでいっぱい。県大会で連覇し、チームの目標だった甲子園での1勝をしたかった」と残念がった。

 夏の甲子園に県内最多の9回出場経験がある日南学園。金川豪一郎監督は練習を中断して全部員約90人に大会中止を知らせた。その後、3年生部員31人を寮内に集め、「君たちが甲子園をめざして努力した時間はなくならない。これからの人生に生かしてほしい」と伝えた。続いてコーチ4人がそれぞれの思いを語ると、気丈に振る舞っていた部員たちの目に涙があふれたという。

 金川監督は「言葉にならない。甲子園は多感な高校生が一つの目標として野球に没頭できる唯一無二の存在。頑張ってきた3年生を思うと何ともやるせなく、自分の無力さを痛感する」と無念さをにじませた。

 宮崎大会は7月11~28日に予定されていた。(菊地洋行、高橋健人)

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 宮崎県高校野球連盟の児玉正剛理事長は20日、朝日新聞の取材に「3年生に活躍の場を設けたい」とし、宮崎大会とは別の大会を検討する考えを示した。

 児玉理事長はこの日午後、日本高野連のネット会議に参加し、中止決定の説明を受けた。「必死で練習してきた選手や指導者を思うと非常に残念。全国大会が無理でも、コロナ感染が落ち着いた宮崎大会はできるかもしれないと準備してきたが……」と肩を落とした。

 10年前の宮崎大会では、口蹄疫(こうていえき)の感染防止のため準々決勝まで無観客試合をした。県高野連はその経験も踏まえ、①保護者を除いて原則無観客にする②「3密」を防ぐため1日3試合でなく2試合にする――などの対策を検討してきた。

 ただ、休校措置で球児は十分な練習をできていない。県立高校の部活動は「2時間以内」という限定つきで20日に再開されたばかり。児玉理事長も「筋肉をフルに使った練習をしないと、試合で肩を壊したり肉離れを起こしたりする恐れがある」と懸念する。

 今春の九州地区高校野球大会県予選、県高校野球選手権大会がともに中止され、今年度は公式戦の経験がないまま夏を迎えようとしている。

 「3年生に背番号をつけ、燃え尽きて終われるような公式の大会を何とか形にしたい」と児玉理事長。今後、安全・健康面も含め、どんな大会なら開催できるのかを慎重に議論するという。県教委などにも相談し、6月中に結論を出す方針だ。(佐藤修史)