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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、第102回全国高校野球選手権大会と、広島大会(朝日新聞社、広島県高校野球連盟、県教育委員会主催)の中止が20日、決まった。第65回全国高校軟式野球選手権大会と県予選大会も中止となった。とりわけ3年生にとっては集大成の場がなくなり、指導者や球児らは肩を落とした。

 今春の選抜大会出場を決めながら、中止で甲子園の土を踏むことがかなわなかった広島新庄。当時、下志音(しおん)主将(3年)は残念がりながらも、「見据えているのは最後の夏。今までの練習を夏につなげたい」と意気込んでいた。

 3月末には12年間にわたり監督を務め、同校を初の甲子園に導いた迫田守昭さんが勇退。4月上旬、グラウンドを訪れた迫田さんは今年のチームについて「一戦ごとに見違えるようなチームになった。非常にすばらしい」とたたえ、「間違いなくお前らは甲子園に出れる」と激励していた。

 昨秋の中国大会では優勝した倉敷商(岡山)と準決勝で接戦を展開、選抜への切符を手にしていた。下主将は「いろんなことを教えてもらった。恩返しに、最後の夏に甲子園に行きたい」と誓っていた。

 しかし、夏の大会も中止に。広島商出身で、甲子園出場経験のある宇多村聡監督は電話取材に、「甲子園は仲間と野球をできる最高の場所。自分と仲間を共に成長させてくれる場所」と表現。中止については「残念の一言。高野連の方々が球児のために考えたくれたことに感謝です」と語った。その上で「どんな状況でも、高校生活すべての場で、今できることを全力でしっかり取り組むことが大事。(部活が休止中で)今は面と向かって話せないが、自慢の選手たちに会って、直接自分の思いを伝えたい」と述べた。

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 甲子園球場で大会が初開催された第10回大会(1924年)で優勝した広島商。今年は昨夏に続き2年連続の甲子園出場をめざしていたが、その道が断たれた。

 いま、分散型の自主登校期間中で部活動は出来ていない。荒谷忠勝監督は中止を受け、閑散としたグラウンドで取材に応じた。「甲子園は球児にとって最高の舞台。ぜひ行きたいと思う場所。甲子園に出場できない、ましてや大会すらできないということは非常に残念です」

 指導者として、生徒にどう声をかけるのか。複雑な胸中も明かす。「私も含め、高校野球の指導者はそこが一番悩んでいるところだと思う。糧として生きていけるような言葉がけをしたいと思っています」

 昨夏の広島大会で初の決勝進出を果たし、準優勝した尾道の部員たちは「今年こそは」と甲子園をめざし、意気込んでいたという。

 尾道の北須賀俊彰監督は「状況を考えればやむを得ない」としつつも、「子どもたちの成長ぶりを日々見てきただけに、何とかやらせてあげたかった。負けるチャンスもなかったわけで、やりきって終わるのとは違う。子どもたちにかける言葉がない」と語った。

 球児の一人も、取材に心境を明かした。

 昨夏、初戦で敗退した因島は、「夏の1勝」を目標にそれぞれ練習に励んできた。敗れはしたが、昨夏は八回に1点差に迫る粘りを見せ、松原稜馬主将(3年)は「最後まで諦めずにやることが大事だと思った」と振り返る。「大会がなくなったショックは大きい。でもこれまでの努力を無駄にしないように、残りの高校野球生活を楽しめるよう悔いなく過ごしたい」(成田愛恵、藤田絢子、北村哲朗)

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 県高野連(山田剛司会長)は、新型コロナウイルス対策を最重要としつつも、特に夏の大会を集大成と考える3年生が、これまでの成果を発揮できる場を設けられないか、日本高野連や県教委と連携しつつ、模索していく考えだ。

 仮に独自の大会を開く場合でも、けが予防などの観点もあり、出場全校が何らかの形で部活動を再開してから、最低1カ月の準備期間が必要と見込んでいる。

 一方で県教委は、現在休校中の県立学校が再開した後も、当面は時間や曜日で人数を振り分ける「分散登校」を実施する方針だ。

 休校は31日までの予定だが、部活動の再開はめどが立っていない。授業の遅れを取り戻すため、夏休みの短縮も予想され、状況はさらに厳しくなる。独自の大会の開催が、秋以降となる可能性も出てくる。

 県高野連の板森匡祐(ただすけ)理事長はこの日、「特に3年生に対して集大成となる独自の大会を提供できればと、最大限の努力をしたいと思います。予断を許さない状況は続いていますが、万全の拡大防止対策等を講じるとともに、新型コロナウイルス感染症拡大の早期終息を願います」とする談話を発表した。(山平慎一郎)

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 プロの道に進んだ元球児もコメントを寄せた。

 広陵出身の小林誠司選手(巨人)は「言葉が見つかりません。甲子園という大きな目標はなくなるが、人として、野球人として成長してほしいし、成長できるように頑張ってほしい」。 瀬戸内出身の山岡泰輔選手(オリックス)は「自分にとっての甲子園は、間違いなく人生のターニングポイントでした。3年生の気持ちは、想像してもしきれません。簡単ではないと思いますが、そういった選手たちのためにも、この先なんとか試合や大会が出来る環境になって欲しいと思います」と思いやった。