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 日本外国特派員協会(FCCJ)は21日、月刊誌の表紙に掲載していた、東京五輪の大会エンブレムを新型コロナウイルスに見立てたデザインを取り下げる、と発表した。東京五輪の大会組織委員会が「著作権の侵害」として取り下げを求めていた。FCCJは「報道や表現の自由ではなく、あくまでも日本の著作権法上の問題」と説明している。

 オンラインで開いた記者会見でFCCJのカルドン・アズハリ会長は「報道や表現の自由についてではなく、あくまでも日本の著作権法上の問題としての議論だ」と強調した上で、デザインを取り下げることについて「日本を含めた世界的なパンデミックの危機の中で、著作権をめぐる法的な争いに進むべきではないと判断した」と述べた。その上で「日本の著作権法には風刺やパロディーについての個別規定がない。規定を持つ国はあるので日本でも議論が広がり、緩和されることを望む」と語った。

 組織委の抗議を受け、FCCJは弁護士などの助言を受けた上で20日夜、デザインを取り下げると組織委に回答したという。協会のウェブサイトに載せていた表紙のデザインは削除された。

 デザインが掲載されたのは、協会の会員向け月刊誌「NUMBER1 SHIMBUN」の4月号の表紙。4月号は新型コロナの特集号だった。表紙は、五輪のエンブレムに似た図柄で、新型コロナを意味する「COVID―19」の文字が記されていた。

 著作権法は、他人の作品を勝手に複製したり、変形したりすることを禁じている。だが、パロディーは元の作品を使って、批評や風刺を伝えることを目的とするため、元の作品の一部の複製や手を加えることが避けられない。

 フランスの著作権法には「パロディー」を認める規定がある。米国著作権法にも、公正な使用なら許可を受けずに認められるという「フェアユース規定」があり、パロディー作品を一定程度、容認している。

 日本の著作権法には、こうした規定がない。このため、日本ではパロディーは認められにくいとされる。ただ、最近の学説では、元の作品の「本質的特徴」を使っていないと判断したり、著作権法が認める「引用」の範囲内とみなしたりして、パロディーを容認する見解もあるという。

 著作権法に詳しい福井健策弁護士は今回のデザインについて「通常なら侵害にあたりそうな類似度で微妙な事例だ。ただ、ここまで風刺意図が明確だと全く異なる印象を与える表現であり、別の作品とみなし、元の作品の著作権は侵害していないという解釈もあり得る。批評や論評の自由を封ずることは、著作権本来の役割ではない」と話している。

 この日の会見では、参加した記者らからFCCJのデザイン取り下げの判断に疑問を呈する声が相次いだ。

 20年近くFCCJ会員でこの会報誌の編集長を務めた経験もあるカナダ人ジャーナリストのジョン・ハリスさんは、今回の判断について「協会の精神に反するものだ」と非難し「FCCJの判断に反対する多くのジャーナリストたちがこの問題を報じ、小さな会報誌の話が、世界的な問題になるだろう」と語る。

 「デザインは新型コロナと五輪について描いた風刺で、本来ならば何ら問題のないものだ」とし「組織委はそのままにしておけばよかったものを、抗議したことによって逆にこのデザインに関心が集まった。墓穴を掘るような行為だ」と述べた。

 40年以上会員で、FCCJ副会長を務めたこともあるイタリアのニュース専門局「SkyTG24」の特派員ピオ・デミリアさんは「もし組織委が風刺画を相手取って訴訟を起こすようなことがあれば、それこそ世界中の笑いものになるだろう」と述べ「取り下げの判断は誤りだ」と断じた。(荒ちひろ、西村奈緒美、赤田康和