長崎市出身の現代美術家で、美術集団「九州派」の一員として戦後の前衛アートを牽引(けんいん)した菊畑茂久馬(きくはた・もくま)さんが21日、肺炎のため死去した。85歳だった。葬儀は近親者で営む。喪主は長男拓馬さん。9月に福岡市美術館で所蔵品展と、お別れの会を予定している。

 1960年前後に「反芸術」を掲げて福岡市に現れた前衛美術集団「九州派」の中心メンバーとして活躍した。2本の丸太と5円玉を用いた「奴隷系図(貨幣)」(61年発表、83年再制作)は、どこかの民族の儀式と見まごう土俗性と呪術性で異彩を放つ作品として話題を集めた。

 木材に幾何学的なデザインを施し、針金など身近な生活廃品を組み合わせた連作「ルーレット」シリーズでも注目され、80年代には灰色の画面に棒状の物体を塗り込めた「天動説」シリーズに代表される、抽象絵画でありつつオブジェの性格も帯びた作品を発表。以降は、一貫して油絵の大作シリーズを発表してきた。

 2011年、福岡市美術館と長崎県美術館が共同開催した回顧展で、淡い色彩で画風を一変させた「春風」を発表。80歳に入ってもさらに表現を深化させ、「春の唄」シリーズを発表してきた。

 絵画は独学で始め、23歳で福岡市南区に自宅とアトリエを構えて以来、その拠点にこだわり、最後まで創作を続けた。

 画家として活動する一方、筑豊の炭鉱画家・山本作兵衛に師事し、藤田嗣治の「戦争画」への論考を発表するなど、絵と美術をめぐる思索を深めてきた。