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 今月1日に20日ぶりの動静が確認された北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、再び「雲隠れ」している。韓国政府は政務をこなしているとみる。正恩氏は最近、最高指導者の偶像化を弱めようとしており、この「現実主義」との関連を指摘する声も出ている。

 正恩氏は4月11日に党政治局会議に出席してから動静が途絶え、15日の金日成(キムイルソン)主席の生誕記念日「太陽節」の行事に出席しなかったことから、健康悪化説が広まった。ところが5月1日、20日ぶりに工場を視察する姿が報じられた。

 その後、再び20日間以上、動静が報じられていない。北朝鮮の内情に詳しい関係者は「正恩氏は地方の別荘などで幹部らと政策討議や事業報告、決裁をスケジュール通りこなしているようだ」とみる。

 こうしたなか労働新聞が20日、最高指導者の偶像化に用いてきた「神話」を否定する記事を載せたことが、韓国の北朝鮮専門家らの間で注目された。正恩氏の祖父の金日成主席や父の金正日(キムジョンイル)総書記は、落ち葉に乗って大きな川を渡るといったような宣伝を行い、偶像化を進めてきた。これについて記事は「実際は人間が、いたところから消えたり再び現れたりできない」とした。北朝鮮では、最高指導者に言及する際に独断で行うことはありえず、記事は正恩氏の意向が反映されているとみられる。

 また、労働新聞の昨年3月の記事では正恩氏自身も「もし偉大さを強調するなどといって、首領(最高指導者)の革命活動や風貌(ふうぼう)を神格化すれば、真実を隠すことにつながる」と述べた。韓国の北朝鮮専門家は「正恩氏が先代の神話による統治を薄め、現実主義や実用主義で政治を行おうとしている」とみる。

 北朝鮮の内情に詳しい別の関係者は、健康悪化説の発端となった「太陽節」行事の不参加も、正恩氏の現実的な行動の一つだったとみている。この関係者によると、北朝鮮は4月初めの時点で、新型コロナウイルスの影響から行事を中止か縮小すると事前に決めていたという。(ソウル=神谷毅)