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 新型コロナウイルスによる生活苦を背景に、見知らぬ人同士がネットでつながり、お金を貸し借りする「個人間融資」の誘いが目立ち始めた。実態はヤミ金業者だったり、見返りに性行為を求めてきたりするケースが少なくない。金融庁も注意を呼びかけている。(国方萌乃、茶井祐輝)

 「新型コロナで休業、失業の方 相談乗ります」

 「コロナの期間のみ ブラック(リスト)の方も高額融資が受けられます」

 3月以降、ツイッターには「#(ハッシュタグ)個人間融資」を付けた投稿が相次ぐ。なかには公然と違法な高金利を掲げるものも。見返りに性行為を要求する融資は、ネットの世界で「ひととき融資」と呼ばれ、こうした投稿も多い。

 個人間融資を求める人をつなぐインターネットの掲示板もある。給料の未払いや失業を理由に、貸し手を探す切実な書き込みがあふれる。北海道の20代女性もそんな一人だ。4月中旬、年齢、性別、借りたい事情、連絡先を書き込んだ。

 アルバイト先の旅行関連会社の業績が悪化。勤務の時間も日数も抑えられ、月15万円の収入が10万円ほどになった。実家住まいだが、父親が昨年他界し、毎月6万円を家計に入れている。自身の借金返済や生活費などで別に7万円が必要という。

 希望額は20万円。借金を任意整理した経験があり、登録貸金業者からは借りられない。過去に4回、個人間融資でしのいだという。

 違法な高金利だが、10万円を借りて5カ月で15万円を返済したこともある。30万円を借りるため、「ひととき融資」に応じてしまった経験もある。「指示に従う自分が気持ち悪かったし、悔しかった」

 埼玉県の20代男性は芸能プロダクションに所属する俳優の卵だ。エキストラなどで月10万円ほどの収入があったが、3月半ばには撮影が軒並み中止に。4月の収入はほぼなくなった。

 収入が不安定なため融資の審査に通らないと思い、ある程度の違法金利も覚悟して個人間融資の掲示板に書き込んだ。ただ、届くメールは、保証金名目で事前の振り込みを要求するような詐欺メールがほとんど。いつ再び仕事が入るのか見通せない。

 政府が一律10万円の給付を決めたが、「一度もらっただけでは不安は消えない。先が見通せない」と途方に暮れる。

個人装うヤミ金業者も 「裸の写真ばらまく」と脅し

 やむなく手を出す人がいるが、さらに追い込まれる結果になりかねない。

 「15万円借りたが400万円支払うよう連絡がきた」「融資保証金として5万円払ったが、連絡がとれない」。国民生活センターによると、個人間融資をめぐるトラブル相談は2018年度から増え始めた。

 大阪府警は昨年5、6月、ネット掲示板で知り合った女性らに違法な高金利で金を貸したなどとして、同府千早赤阪村職員の男(懲戒免職)を貸金業法違反と出資法違反の疑いで逮捕した。男は性行為を条件に融資していたという。

 しもひがし法務司法書士事務所(東京)には、個人間融資の被害相談が年300件以上寄せられる。下東洋介代表によると、相談のほとんどは、桁違いの利子を要求されるケースだ。利子の相場はおおむね1週間で5割。3万円を借りると、翌週に4万5千円になる。「金銭を吸い尽くされたうえで、遠くない未来に破綻(はたん)してしまう」という。

 貸し手は、個人を装って紛れ込んだヤミ金業者とみられる。逃れられないよう、借り手に自分の顔や身分証の写真を送らせ、支払えないならツイッター上にさらすと釘を刺す。最近では、借り手に裸の写真と20人ほどの友人のLINEアカウントを伝えさせ、支払いが滞れば写真をばらまくと脅す手口も横行しているという。

 金融庁は昨秋以降、ツイッターの公式アカウント「金融庁個人間融資対策」から、個人間融資に誘う投稿に「貸金業法の規定に抵触する場合がある」と警告メッセージを送り、削除につなげてきた。新型コロナに便乗し、誘い文句に「#コロナ」を含む投稿にも警告し、4月からホームページでも注意喚起している。

 「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会」でヤミ金対策委員長を務める司法書士の前田勝範さんは、新型コロナによる倒産や失業で、個人間融資に頼ろうとする人が増える、と心配する。「法外な利子を示唆する投稿をSNS事業者に削除させるなど、もっと厳しい規制が必要だ」と指摘する。

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 <個人間融資> 面識のない人同士がSNSやネット掲示板でつながり、お金を貸し借りする行為とされる。たとえ個人でも、繰り返し金を貸せば「貸金業」とみなされ、国や都道府県への登録がなければ、貸金業法に違反する可能性がある。また、出資法は個人同士でも上限金利(年109・5%)を定めており、違反すれば刑事罰の対象になる。