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 あなたの「パートナー」とは? 結婚相手、子ども、恋人、親友、仕事仲間のほか、ペットという人もいます。そもそも不要との声もあるでしょう。パートナーについて語る時、私たちは少し、口数が増える気がします。心のよりどころである「他者」。それは、私たち自身と切り離せない「合わせ鏡」のような存在かもしれません。

会えない!求婚するぞ

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。感染への恐怖が人と人との距離を遠ざける一方、「実際に会えなくなるという焦りが、自分から一歩を踏み出すきっかけになったのは確かです」と話すのは、都内に住む40代の男性会社員です。

 政府の緊急事態宣言が出た4月7日の夜、交際中の女性に結婚を申し込みました。相手は3年前に来日した30代の中国人女性。「WeChat(ウィーチャット)」と呼ばれる翻訳機能つき通信アプリを使ってプロポーズすると、すぐにOKと返事がきました。

 出会いは今年2月。長く独身だった男性が結婚相談所からの紹介で対面した時は、片言の日本語しか話せない彼女に、「結婚はないな」と思ったそうです。でも、おしゃべりでよく笑うといった率直な感情表現や、薄化粧に長い髪など清楚(せいそ)な雰囲気が好印象で、翌週末は2日間ともデートをしました。土曜日は男性がすしをごちそうし、日曜日の中華料理店では女性が支払いました。

 「それまで会った日本の女性は『おごってもらって当然』という態度だったので、感激しました」

 そんな折、国内でも次第に感染が拡大。女性の勤務先は中国人が多く、会社が借り上げた寮に一緒に住んでいます。中国出身の従業員には「外出禁止」が言い渡され、2人のやりとりは通信アプリのみ。「収束の見通しが立たないけど、どうしても彼女との関係を前進させたかった。希望と不安が半々ですが、早く緊急事態宣言が解除されることを祈るばかりです」

コロナ禍 お見合い活況 独居女性からの相談目立つ

 コロナ禍は、「人生のパートナーが欲しい」という気持ちを募らせるものなのかもしれません。婚活市場にも新しい動きが出ています。

 全国で結婚相談所を展開する会員数約6万人(日本結婚相談所連盟の会員数含む)のサンマリエ(東京)では今年4月、相談と問い合わせ数の合計が昨年同月比で約3割伸びました。これまでお見合いやカウンセリングはサロンへ足を運んでもらい「対面式」で実施してきましたが、この4月から、オンライン上でカウンセリングからお見合い、デートまでできるようにしました。お見合い後に双方が再会を希望した「交際率」は、従来の対面お見合いだと40.5%でしたが、オンラインお見合いでは59.3%に上がったそうです。

 「人となかなか会えないからこそ、寂しさが増して、誰かと一緒にいたいと思う方が多いのでしょう。私たちも、出会いの機会はご縁なので止めたくないと思いました」と同社広報の鈴木志穂さん。

 春以降に目立つのは、ひとり暮らしの働く女性からの相談。「こういう状況になり、いざという時に誰かに守ってほしいと感じた」「近くに頼れる人がいなくて心細いし不安」「私は将来このままひとりぼっちなのでしょうか」――といった相談が寄せられているそうです。

 東京・八重洲で結婚相談所「最短結婚ナビ」を運営する仲人の鎌田れいさんは「ネット婚活が普及し、次々に複数の異性と会えるようになったが、成婚まで至りにくい状況が続いてきた。最近は『コロナが落ち着いたらプロポーズする』と伝えてきた男性会員がいるなど、こんな状況下だから前向きに過ごしたいという気持ちに、背中を押されているようだ」と指摘します。

虚構の自分は捨てるべし 女性主導の婚活サイト運営 川崎貴子さん

 働き続ける自分に正面から向き合ってくれる人と出会いたい――。パートナーを探す「婚活サイト」の世界に、そんな共働き志向の女性に特化した「キャリ婚」システムも登場しています。

 「主導権は女性」の発想で2016年11月にスタート。登録時に入会金(1万9800円)と月会費(3850円)を払うのは女性だけで、ウェブの専用ページで男性全員の情報を閲覧、気に入った人にアプローチするというやり方です。

 男性の登録は無料ですが、事前にスタッフが面談をします。独身であることや年収の確認のほかに、「家事の外注はOKか」「妻の収入が自分より多くてもいいか」と細かく質問。働く女性と連れ添える人物かを判断された上で登録となります。男性は自分から女性の情報にはアクセスできません。

 運営者の1人、川崎貴子さん(48)は、働く女性のキャリア支援に長く携わる中で、女性たちが婚活サイトで知り合う男性の中には既婚者や性行為目当て、宗教の勧誘などが少なくない実態を知って憤り、新たなシステムを考えました。

 「婚活市場にはいまも、女性に『写真ではピンクのカーディガンを着よう』とか『料理上手な専業主婦志望をにおわせて』などと、控えめな印象を求める風潮があります。でも、それが虚構の自分だったら? 交際したって長続きしません」

 そこで導入したのが、女性が男性を選ぶシステムです。川崎さんは「女性の方が異性を選ぶ目がシビアなのでマッチング率は上がるはず」と推測しました。当初は男性を無料にすれば、女性の稼ぎをあてにする“ヒモ候補”が増えるかもしれないという懸念も。しかし、ふたを開けると男性の大半は定職があり、「仕事のことも含めて話し合える対等な関係のパートナー」を望んでいるといいます。

 キャリ婚に登録する女性も、「高収入かつ高学歴の男性なら安心できる」という母親世代の価値観に今も縛られがちだそう。「社会はすっかり変わったのに『バブル紳士』のような実在せぬ人物を必死で追いかけるのは時間の無駄なんです」

 川崎さんたちは、サイトとは別に女性限定のオンライン勉強会も催し、「働く自分の結婚相手にふさわしいのはどんな男性か」といった具体像を探るそうです。結果、成婚率は25%とかなり好成績。

 「婚活とは、ただ1人と適合するための手段。マッチングアプリ上で大勢に『いいね!』をもらう人気投票ではまったく意味がありません」(高橋美佐子)

「つくる」よりも「なる」 作家・柴崎友香さん

 「パートナー」という言葉は、「ご主人」や「家内」などが今の社会にそぐわなくなってきたこともあり、よく聞くようになりました。「代わりのいない無二の人」から「チームを組んでいる人」まで、人によりイメージは違うようです。私は「協力し合う」という語感があっていい言葉だなと思います。

 ただ依然として、私的な文脈の「パートナー」に当たる存在は「婚姻関係を結んでいる相手」と捉えられることが多いと感じます。この企画のアンケートでも、5割近くが「自分のパートナーは夫/妻」と答えています。

 日本では、人生の時間を共にする人と言うと「結婚している男女」と限定的に考える風潮が今も強いのだと思います。結婚していないと「何かが欠けている」と見られることもある。現実には、友人や同性の恋愛相手などもっと色んな関係性が存在するのに、なぜだろうと思って書いたのが、小説「待ち遠しい」でした。制度の未整備や規範意識の強さ、ドラマやCMなどによる刷り込みもあるのでしょう。

 取材などで、「パートナーはいた方がいいか」や結婚の是非など、なにか「あるべき」形を前提にした質問をされることがあります。でもパートナーの相手も「あり方」も、もっと多様でいいのでは。パートナーは意識的に「つくる」より「なる」もの、現実の関係性が先にあるものだと私は思うのです。

 離婚した友達は、今の方が元夫との関係が良くなって育児で協力し合うそうです。「生活のパートナー」ではなくなったけど、「育児のパートナー」になったのかもしれません。

 ある関係を絶対視したり、相手への期待、逆に自分もこうしなきゃとこだわり始めたりすると、しんどくなる。経験上、私もそうでした。関係を維持しようとするあまり、自分の言いたいことを言えなかったり、相手のちょっとした言葉に左右されたり。それよりも、目の前の相手とどう関係性をつくっていくかだと分かっている方が楽なのではないでしょうか。

 人生でかけがえのない唯一のパートナーと出会えれば幸せで、いいことです。そして友達、相談相手、一緒に仕事をする人など色んなパートナーを持っているのもいい。

 私自身の実感では、パートナーとは「共に支え合っている人や存在」という意味合いが近いかな。私にパートナーがいるか、ですか? 人との関係性にあまり名前をつけようとは思わないんですよね。20年間同じ仕事をやってきて、自分のこともだいぶ分かってきたし、自分がやりやすいように生活を作ってきたとようやく思えるようになりました。家のことや時間をもうちょっときっちりしたいなぁと時々は思っても、今足りないところは特に感じません。若いころから友達や周りの人が助けてくれることが自分の人生のいいところだな、と思っています。

 パートナーって相手のあること、生身の他人とつきあっていくことなので、自分の意思や努力だけで解決することばかりではありません。現実の関係性を大切にするため、最善のことをしていくのがいちばんだと思います。(聞き手・藤田さつき)

結婚だけじゃない、関係多様

●残りの人生、今の主人は×

 結婚する前は経済力・生きる力など、子育てと家族づくりに必須な条件をまず考えましたが、子育ても半分終わって、残りの人生を自分らしく生き楽しみたいと思った時、今の主人とは違うパートナーでないとそれができないことに気付きました。両方がぴったり合う2人、となると滅多にないのではないかと思います。そのためなら離婚・再婚をした方が、一度の結婚に縛られるより幸せだと思います。(海外・50代女性)

●離婚後、犬と山暮らし

 50歳で離婚し、定年退職を機に犬をパートナーとして山暮らし10年。十二分に満足した生活を送っています。数年で犬を見送ることとなるので、その後の生活と自分の死に際を心配しています。(山梨県・70代男性)

●性的欲求みたす人は別に

 私は今は夫が自分が生活する上での最適のパートナーと思えているが、セックスレスの時期が長く、いろいろ葛藤した時期もある。どうしても受け入れ難い面に目をつぶって、一緒にいられるようになったのは、性的欲求をみたしてくれる人が現れたことも大きい。(東京都・50代女性)

●ゲームのキャラだって

 血縁関係、伝統的な婚姻、恋愛など特別な名前のついた関係だけが「パートナー」なのではない。金銭的な理由で一時的にルームシェアをすることになった同居人やゲームの中のキャラクターだって立派なパートナー。心の結びつきの数だけパートナーがある。(東京都・30代男性)

●生き方しばる婚姻システム

 婚姻という契約を結ばなくても、お互いにうれしいことを分かち合い、つらい時は支え合って生きていけたら幸せだと思う。むしろ、婚姻というシステムのせいで生き方が制限されることに疑問を感じる。(東京都・30代女性)

●夫婦で働ける環境作りを

 人口の減少が進む日本では、今の生活を維持することが将来難しくなる。そのため結婚と出産と子育てできる経済力を持てることが必要。日本独自の転勤などの悪習をなくし、夫婦で働ける環境作りが大切だとおもう。(大阪府・30代男性)

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