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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、神奈川県内の学校から学びの声が消えた。その代わり、声なきメッセージがグラウンドや校舎の窓から、子どもたち、そして地域へと発せられてきた。そこに込められた思いとは――

 横須賀市を南北に走る京急久里浜線。堀ノ内―新大津間の車窓から、大きな文字が見える。

 STAY(ステイ) HOME(ホーム)週間

 ソーシャルディスタンス

 ~大切な人だからこそ 今は離れよう~

 文字は、市立大津中学校(星野洋司校長、生徒数764人)のグラウンドに描かれている。コロナ禍の中、電車で仕事などに出かける人にエールを送ろうと教職員が始めた。

 最初は4月末、「STAY HOME週間」の後に「心一つに! がんばろう!!」と書いた。大型連休明けには「今できることを! あと少し!」に。20日に今のメッセージにした。

 休校中、3年生に課した日記に、生徒の一人はこう記した。「母が仕事帰りの電車から写真に撮って見せてくれた。先生方の取り組みに、励まされました」

 星野校長は「うれしかった。取り組みの意義も確認できた」と話した。

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 横浜市立大綱中学校(生出(おいで)宏校長、生徒数869人)は、校舎間の渡り廊下の窓にメッセージを貼り出している。

 「今こそ心に信条を!」

 その横に、教員が描いた生出校長の似顔絵を添えた。「下を見て」と促すように指さす先には、同校で50年以上受け継がれる信条を書いた垂れ幕がある。

 「ひとりのためにみんなが みんなのためにひとりが努力しよう」。生出校長は「今こそ心に留めて、学校と地域が一体となって乗り越えたい」と言う。

 メッセージの掲出は、大型連休明けに教職員らが「生徒たちにメッセージを送りたい」と提案して決まった。初めは「みなさん元気ですか?」で、このほど今のメッセージに変えた。

 課題配布などで登校した生徒からは「SNSで見た」「先輩から教えてもらった」といった声が聞かれるという。

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 横浜市立日吉台中学校(諏訪部真史校長、生徒数1016人)は今月から、バス通りに面した4階建て校舎の2階の窓に、「台中は離れていても心はひとつ」と掲げている。

 自宅で寂しい思いをしている生徒たちを励まそうと、教職員らが発案した。窓の数に合わせて14文字のメッセージを諏訪部校長が考え、美術科の教員が模造紙でつくった。「台中」は学校の愛称だ。

 同校では1年生は「青学年」、2年生は「赤学年」、3年生は「緑学年」と呼んでいる。メッセージにこの3色の文字を使うことで、全学年の一体感を表現した。通りからも、よく見える。諏訪部校長は「卒業生や地域の人を含めて、つながりを感じてもらえれば」と話す。

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 大磯町立大磯小学校(青木弘校長、児童数886人)では22日、イラスト入りの「皆さーん、『笑い手洗いハッピー大磯』ですよ!」とのメッセージが校庭のフェンスに設置された。

 青木校長が「保護者が元気になれば、児童も元気になれる」と提案し、教員3人がメッセージを考えた。「家庭でも笑って欲しい。手洗いをして、緊急事態宣言解除後は元気に登校を」との願いを込めた。メッセージには、町の観光キャラクター「いそべぇ」やケーキのイラストなどを織り込んだ。

 製作者の一人、5年生の担任の高橋智美先生は休校期間中、児童に電話をかけ、相談に乗っている。保護者の健康も気にする。「みんな苦しい日が続いている。見る人が足を止め、楽しく見てもらえたらうれしい」と話した。

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 茅ケ崎市立梅田中学校(森井康匡校長、生徒数349人)では、校舎3階の窓に「コロナウイルスに負けるな みんなで危機を乗り切ろう」、2階の窓には「医療従事者、スーパー従業者など最前線で働く皆様、本当にありがとうございます」とのメッセージが掲げられている。

 森井校長が「子どもたちに何かできないか。学校前を通る人の気持ちも、少しでも休まれば」と考え、自身でA3判の紙に1文字ずつ印刷した。生徒の保護者には、医療関係者やスーパーで働く人もいるという。(茂木克信、佐々木康之、松沢奈々子、斎藤茂洋)