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 北海道幕別町にある私立江陵は、3年生20人で活動してきた。道外出身者ら寮に残った7人は20日、部屋のテレビで全国高校野球選手権中止発表の記者会見を見た。自宅に戻っていた13人はネット通信などで谷本献悟監督の説明を聞いた。

 主将の尾崎太郎は横浜市出身。不思議と冷静だった。覚悟していた、と言ってもいい。監督からは「絶対に夏の大会があるぞ」など、期待を持たせるような発言は春から一切なかったという。「どうなってもいいように準備しよう」と。

 入学時から「覚悟」していた学年だ。2016年には左腕古谷優人(ソフトバンク)を擁して北北海道大会で4強入りしたが、彼らが入学する1年前の17年には、道立幕別との統合が決まっていた。江陵として最後の入学生。後輩はいない。昨夏からは何をするにも20人だけになった。昼間でも零下の厳しい冬。1日1千スイングの練習を経て、結束は一層強まった。

 20日、「生徒の顔を見て、中止と話せなかった」と言う谷本監督が初めて「もしも」と言った。「周りの大人たちは動いてくれている。地区大会に代わるような大会があれば、どうする」。部員たちは返した。「白樺学園に勝ちたい」。昨秋の明治神宮大会で4強入りした、同じ十勝地区の強豪。最後の最後まで、20人で挑んでいく。

 テレビで見た「甲子園」にあこがれ、国境を越えてきた選手もいる。この夏で休部が決まっていた岡山県共生。中止発表の会見を、寮に残った台湾人留学生4人は言葉の意味を自分の中に落とし込むように、時折うなずきながら聞いた。

 県北西部にあり、国際交流が盛んな私学だ。野球部からも李杜軒(リートゥーシェン)(元ソフトバンクなど)や呉念庭(ウーネンティン)(西武)らが輩出したが、後任の指導者不足などを理由に部員募集を停止し、3年生16人で活動していた。

 昨秋は県大会を前に地区代表決定戦で敗退した。森下雄一監督は創部以来初の台湾人主将・林承緯(リンチュンウェイ)を、三塁から守備の要である捕手へコンバート。最後の夏にかけていた。

 だが、休校で日本人部員が自宅待機になり、部は解散状態に。寮に残った4人は大会開催を信じて毎日、打撃練習や体幹トレーニングに取り組んだ。

 「甲子園に行けないのはとても悲しい」と林。一方で「ある程度、予測していた」とも言った。

 夢は絶たれたが、日本の大学で野球を続けようと思う。「何かしら大会をやってほしい。それが次に進む原動力になる」と、バットを振り続ける。(山下弘展、大坂尚子)