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 夏の甲子園と千葉大会の中止決定から一夜明けた21日の夕方。安房(館山市)の3年生、吉田悠人主将は鴨川市の自宅で、和田聖監督(37)と加藤伸洋部長(37)の訪問を受けた。監督らはこの日、「顔を直接見て話をした方が、選手のケアになる」と、2、3年生全31人の部員の家を一軒一軒回っていた。

 半袖の練習着姿で、背筋を伸ばして監督らを迎えた吉田主将。

 「気持ちはどうだ?」

 「仲間には明るく振る舞っています」

 「主将として現実を受け止めることも教えたよな」

 「はい」

 「また絶対、グラウンドで会おう」

 「はい……」

 5分間の会話の最中、感情が高まり、思わず言葉が詰まった。バットの素振りでまめが目立つ右手で、目元を拭った。

 昨晩はあまり眠れなかったという。卒業した先輩からの応援メッセージが入ったDVDを見た。時間を惜しむように仲間と連絡を取り合った。

 小学2年生の時、地元で野球を始めた。祖父と父が庭に立ててくれたネットに向かい、ティー打撃に励んだ。進学した安房は、2008年春の甲子園出場校。憧れの大先輩たちは常に「地元のヒーロー」だった。

 安房野球部のスローガンは「人のために犠牲になる」「人のために手を汚す」。主将として誰よりも実践してきたつもりだ。

 監督と部長の訪問を受ける前、2人から5月上旬にもらった手紙を読み返していた。「野球は心のスポーツ」「心の上に技がある」「不思議な力~ 野球に限らず、どんなことでも最後は『人』に行きつく」……。野球から学んだ人間力を今こそ生かす時、そう思い始めた。

 「監督、部長、ありがとうございました!」。恩師2人をこう見送り、笑った。「人として教わってきたことがクセになっています」

   ◇   ◇

 成田市の成田高。21日朝、生徒が誰もいない3年生の教室で、担任の梁川(やながわ)啓介部長(45)がノートパソコンを開いていた。インターネットを介し、3年生の部員たちと言葉を交わすためだ。

 学校は2月下旬から休校。野球部は4月20日まではグラウンドでの自主練習を続けていたが、その日以降、寮やグラウンドも使えなくなり、部員と顔を合わせることはなかったという。画面越しでもしっかり話すのは約1カ月ぶりだ。

 部員たちも次々と発言した。「努力は無駄にはならない」「人間的にも成長できた。みんなありがとう」。オンライン授業が始まるまでの数分間だったが、目をこすって上を見上げる部員もいた。

 古谷将也主将はこう言った。「キャプテンをやってきて支えられてばかり。最後の最後くらい、みんなに返せるように今まで通りチームを最優先して頑張りたい」(福冨旅史、小木雄太)