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 埼玉県本庄市の理髪店内に大きな火消し半纏(はんてん)が飾られている。昨年11月に亡くなった中学以来の親友から店主が「形見分け」でもらった思い出の品だ。「新型コロナ火消しの思いを込めて」。そんな御利益(ごりやく)をお客さんにもお裾分けしようと居間から持ち出した。

 半纏が登場したのは本庄市緑2丁目の理髪店「ぱき」。店主の斉藤祐司さん(73)と妻の紀代美さん(73)が経営している。夫妻は市立本庄中学(現・本庄西中)の第15回卒業生。同じ学年に斉藤晴雄さんがいた。晴雄さんは28歳のころ、祐司さんら中学の同級生に呼びかけ、15期生にちなんだ「壱伍会(いちごかい)」を結成。夏祭りで神輿(みこし)を担いで地元を盛り上げようと、晴雄さん、祐司さんら20人でお金を出し合って東京・浅草のお祭り用品店で神輿を購入した。会には最盛期で70人が名を連ねた。会員は50歳近くなって担ぐ体力が衰えるまで担ぎ続けた。

 晴雄さんは会長を十数年続けたほか、本庄市議を3期12年務めるなど常に15期生のリーダーだった。そんな晴雄さんが数年前に体調を崩し、入退院を繰り返すようになる。

 3年前、突然「家に来てくれ」と祐司さんに連絡があり、趣味で集めた品々の中から火消し半纏を選び、「持って行ってくれ」と言われた。肩幅75センチ、丈が125センチある刺し子生地の分厚く巨大なもので、火消しと見られる偉丈夫が纏(まとい)を担いでいる絵柄が描かれていた。晴雄さんが他界後、「あれは形見分けだったのではないか」と、祐司さんは思うようになった。

 コロナ禍が激しくなった4月初旬、「コロナはオバケよ 油断禁ず 力を合わせよう」などと描いた絵、邪気を払うという信仰のある柊(ひいらぎ)の枝などとともに店に飾った。祐司さんは「客商売だから自分も怖い。ましてやお客さんも感染してほしくない。コロナ火消し半纏。晴雄さんも喜んでいると思う」と語る。(坂井俊彦)