第4回オンラインで発信する球児「甲子園なくてもやり抜いて」
愛知の知多翔洋、岩津、富田、豊野(ゆたかの)、緑の公立5校の主将らがオンラインで集まり、熱く語り合った。「大会の開催は厳しいのはわかっているけど、あきらめきれない」「社会を明るく元気にしたい」「野球を使って発信したい」。監督は口を挟まなかった。
きっかけは、4月初め。知多翔洋の伊藤仁監督が提案した。部活動再開の動きが見えないなか、「高校生同士で意見を交わし、発信しては?」。選手の賛同を得て交流のある4校に声をかけ、5月3、10、17日と会議を3回開いた。司会を務めた知多翔洋の余語直樹(3年)は「苦しいのは自分たちだけじゃなかった。一緒に頑張ろうと」。
甲子園の中止が決まった20日、伊藤監督と3年生12人のオンラインミーティング。選手は涙ぐみ、言葉に詰まりながら思いを明かした。主将の野口魁斗(3年)は「悔しいけれど人生は続く。最高のものを作って、前に進もう」。
伊藤監督は日大三(東京)などの強豪校を訪ねて指導法を学び、甲子園を目指してきた。「公立校でも甲子園にたどり着けることを証明したかった。甲子園がなくても、活動をやり抜いてほしい」と願う。
夏の選手権大会はなくなったが、5校のオンライン活動は続く。スローガンは「あきらめず、つなぐ夏」。6月、各校で野球への思いを込めた動画を撮影し、SNSで発信する。
知多翔洋と豊野は、野球部の活動を発表するプレゼン大会を開く。主体的に考え、社会に発信できる人間になってもらいたい。伊藤監督は夢を描く。「全国の学校やほかの部にも参加してほしい。そんな甲子園があってもいい」
長野でも、思いを発信する球児がいた。
「#俺たちの夏がありますように」
甲子園の中止が決まる数日前。このハッシュタグがSNSで広がった。発信した長野西の小山尊久(たかひさ)(3年)は「大会をやってほしい。それだけだった」。
監督からは「願うのは自由」と言われていたが、怖さもあった。「高校総体が中止なのに声を上げていいのか。『高校野球だけ特別』と思われないか」。でも、勇気を出した。「全国の人と思いを共有できた。野球の力ってすごいな」
中止が決まった20日の登校日、3年生13人とのミーティング。大槻寛監督が言葉に詰まり退席すると、「監督の話を聞きたい」と選手が迎えに来てくれた。「強い子たち。本当にうれしかった」。そして、選手に語りかけた。「感情を抑えるな。悔しいなら悔しい、むかつくならむかついていい。どこかで必ず前を向くんだぞ」
小山はまだ、前を向けない。「時間がかかるかもしれない。でも、気づいたら野球をやっていると思う。野球が大好きなので」(木村健一、辻隆徳)
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