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 まず、今般の新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、感染された方々やそのご家族、不安のなかにおられる方々に対して、心からお見舞いを申しあげます。

 新型コロナウイルスの感染症拡大は、私たちの生活にも様々な変化を与えていますが、「学術集会」という、研究者などの学会関係者が日頃の取り組みや研究を発表する場にも、開催の延期や中止、インターネットを活用したWebセミナーの開催などが相次ぎました。国内外のがん関係学会の状況をご紹介します。

若い世代のがん、学術集会をオンラインで

 私も所属をしている一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」(以下、AYA研)の学術集会も、新型コロナ感染症拡大の影響を受けた学術集会のひとつでした。

 研究会の名前にもなっている「AYA」とは、思春期と若年成人を表す「Adolescent and Young Adult」の頭文字をとったもので「アヤ」と呼び、15歳~39歳という比較的若い年齢でがんの診断を受けた患者のことを指します。2回目となるAYA研の学術集会は、3月20日~21日に名古屋市内で開催する予定でした。

 AYA世代のがん患者は、人数が少ないことや人生の基礎を作る成長期とがん治療が重なることから、就学や就労、恋愛、結婚や生殖、治療後の体調管理など、様々な問題が山積をしています。学術集会は、そうした課題への取り組みを議論し、共有するための年に1度の貴重な場になります。しかしながら、学術集会の参加者は、医師や看護師などの医療従事者、重症化リスクが高いと言われているがん経験者です。中止か延期か、それとも、他の方法で開催するかという議論になり、開催1カ月前の2月末に「Webセミナーでの開催」へ急きょ変更となりました。

拡大する写真・図版ネットで配信中の様子(大会長の堀部敬三・名古屋医療センター臨床研究センター長のあいさつ)

 Webセミナーのメリットは、なんといっても、「どこからでも参加ができる」ということです。今年は事前申し込みで269名の登録があり、常時100名前後の方がセッションを視聴していたとのことです。もし、通常開催されていたら、学会会場のそばに宿泊をし、朝から開場へ足を運んでいたと思います。ところが、Webセミナーは自宅からでも、移動をしながらでも、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもセッションを聴講することができます。これはWebセミナーの大きな利点です。

 デメリットは、端末などインターネットの環境がなければセッションの聴講ができないことや参加者同士の意見交換や質疑応答が少し難しいことがあります。例えば、学会会場であれば一つの質疑応答を参加者全員で共有したり、自分の認識を演者に確認しながら質問することができます。今回は、これらの口頭でのやりとりがメール形式になりましたから、「言葉の定義など、正しく質問をしないと、正しい答えが返ってこない」ことがあります。私もメールで質問をさせてもらいましたが、忙しい診療現場を抱えながらの返信なことが容易に予想できるので、意図した質問とは違う内容の返信がきても、申し訳なくて返すことができませんでした。

 急な開催方法の変更、新しい挑戦でしたので、全てが当初の目標通りにはいかなかった部分もあるとは思いますが、それでも無事に開催できたのは、事情を理解、応援して頂いた参加者のみなさん、そして、学術集会事務局、AYA研事務局、各委員会や共催企業の協力、配信に尽力してくれたNPO法人がんノートのふんばりのおかげだったと思います。

 次回の第3回は、2021年3月20~21日に、東京ビッグサイト国際会議場で開催予定です。予定通りにはいかないことを前提に、多くの皆さんの参加と交流があることを願っています。

拡大する写真・図版第3回学術集会のポスター

・一般社団法人 AYAがんの医療と支援のあり方研究会 (AYA研):

 https://aya-ken.jp/別ウインドウで開きます

4月の国際学会も動画で

 新型コロナウイルス感染症は、日本よりも先に韓国、欧米で拡大しました。そのため、3~4月の国際学会はほとんどの集会が中止になりました。その中で、画期的な仕組みで開催をしたのが、アメリカ癌(がん)学会(AACR:American Association for Cancer Research)の学術集会でした。

 AACRは、4月24日から29日に、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴで学術集会を開催する予定でした。私も参加をする予定でしたので、1月には事前登録を完了していたのですが、感染が拡大するに連れて、「開催方法を検討しています」のメールがきたのが2月上旬。3月には、全てのセッションを「無料のWebセミナー」で配信することが発表されました。無料のWebセミナーになったことで、飛行機代、宿泊費、参加費など、合計約30万円の節約になりましたが、5日間にも及ぶ膨大な量のセッション数、登壇者がいますから、その参加方法や時差、聴講の方法など、いったいどうするのかと思っていました。

 結局、Webセミナーは2回に分けて流されることとなり、その第一部として40演題もの優秀演題や口演と125本のポスタービデオが、4月27日~28日にインターネットで配信されました。

 セッションは、事前に収録された動画をプログラムの日程にそってインターネット上に配信をし、質疑応答はチャットに書き込まれたものを整理して、座長が登壇者に投げかけるという方法がとられました。

 動画の中には音が聞き取りづらいものや、電話など収録時の雑音が入っているものもありました。また、同じ時間帯にアクセスが集中するとセッションへのアクセスに時間がかかってしまったり、音声がとびとびの状態になる、質疑応答の時間に登壇者がパソコンの前から離れていて対応できないといった事件もおきました。しかし、研究の内容はどれも素晴らしいものばかり。しかも「無料」です。

終了後もオンデマンド配信で視聴

 現地時間の朝9時は日本時間では21時。始まる前は時差も心配をしていましたが、終了後にも映像を見ることができるオンデマンド配信も用意されたので、まさに「いつでも、どこからでも」、全てのセッションやポスターを見ることができました。AACRは、第二部を6月22日から24日にかけて無料配信する予定になっています。今から楽しみにしています。

 また、毎年、世界から約3万人の医療従事者などが参加する、米国臨床腫瘍(しゅよう)学会ASCO(American Society of Clinical Oncology)の学術集会も、5月29日から31日の3日間にWebセミナーで配信されることが決まっています。セッション数はAACR以上に膨大な数になるので、こちらも楽しみにしています。

 日本では、「新しい日常」がキーワードになっていますが、学術集会なども、これからは企業協賛のあり方も含めて、開催方法が変わっていくのかもしれません。

桜井なおみ

桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。