拡大する写真・図版断崖にへばり付くように建てられたモスクの施設=2020年1月22日、イスラマバード、乗京真知撮影

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 パキスタンの首都イスラマバードの山の中に、新婚カップルが通うモスク(イスラム教の礼拝所)がある。かつて聖者が修行した場所だったが、次第に子宝を祈願する聖地として知られるようになったという。しかし、なぜ山の中で、それもモスクで……。現地では、アラビアンナイトに出てきそうな「精霊の恋の物語」が語り継がれていた。

拡大する写真・図版イスラマバードの北の外れの山に続く道。右上の断崖に見える白い建物がモスクで、ふもとからは徒歩で1時間ほどかかる=2020年1月22日、乗京真知撮影

 寒さが緩み始めた今年1月下旬、イスラマバードの北の外れの山「マルガラ・ヒル」に向かった。ふもとの村ヌール・プール・シャハン(高貴な光が差す所という意味)からは、山奥のモスクへと細い参道が延びていた。

 長雨続きで参道はぬれていたが、幸い取材日は朝から好天で、登って10分も経たないうちに汗が出てきた。放し飼いのヤギやウシとたわむれ、休憩を挟みながら歩くこと約1時間。緑に覆われた山の中腹に、岩肌がむき出しの断崖が見えてきた。「ロヘダンディ」と呼ばれる聖地だ。

 断崖には緑色の屋根のモスクがへばり付くように立っていた。屋根の上では野生のサルたちが毛繕いをし、赤や黒の旗がはためいていた。色には様々な意味合いがあるが、ここでは緑は平和、赤はイスラムの守護、黒は預言者への愛を表しているのだという。

 モスクの前には、さすらいの音楽家たちが集まっていた。伝統楽器の太鼓「ドーラク」や箱形オルガン「ハルモニウム」に合わせて、宗教賛歌「カッワーリー」を朗々と歌い上げる彼らは、観光地を転々としながら暮らしている。その音色に癒やされた観光客からの心付けが、彼らの暮らしを支える。

イスラム世界の精霊の一部

拡大する写真・図版山のモスクには、子供を授かりたいと願う新婚の夫婦らが訪れる=2018年9月2日、イスラマバード、乗京真知撮影

拡大する写真・図版聖者バリ・イマームが使っていたとされるかまど。お祈りに来た人たちは聖者のパワーを授かろうと、灰を触ったり持ち帰ったりする=2018年9月2日、イスラマバード、乗京真知撮影

 この日は午前中だけでも30人ほどが参拝に来ていた。

 この場所は17世紀、一帯にイスラム教を広めた聖者バリ・イマームが瞑想(めいそう)した場所として知られている。聖者が瞑想したという洞穴や、炭を焼くかまどがあり、参拝客は聖者のパワーを授かろうと、かまどの灰に触れ、ひとつかみして持ち帰る習わしがある。

 お祈りを終えた参拝客は、モス…

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