拡大する写真・図版西成活裕さん

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 これまで絶対に必要だと思っていたのに、なくなってみると、とくに困りもしなかったこと。逆に、もっと削っていいだろうと感じていたのに、足りなくなって悲鳴を上げたもの。新型コロナとともに生きるなかで、私たちの無駄をめぐる判断基準が揺らいでいます。無駄って、そもそもなんなのだろう――。著書「無駄学」(新潮選書)で知られる物理数理学者、西成活裕・東京大学教授に聞きました。

――デスクワークのための通勤やお付き合いの飲み会など、今までやってきたことを「無駄だったかも」と気付いている人がたくさんいます。一方で、保健所や学童保育の人員や態勢など、効率化を急がずにもっと充実させておけばよかったのに、と後悔することも多いです。気づけなかった私たちが不注意だったのでしょうか。

 「いえいえ、『無駄』かどうか判断するのは、決して簡単ではありません。たとえば、『この世に無駄なものなど何もない』という人がいれば、『この世は無駄だらけだ』という人もいる。なぜこういうことが起こると思いますか?」

 「私は地球レベルから夫婦げんかまで、ありとあらゆる「無駄」を分析した結果、ようやく分かりました。原因は、『目的』と『期間』が明確になっていないことにあるんです」

無駄かどうかは「目的」と「期間」で決まる

――どういうことですか?

 「ある物事を無駄かどうか判断する時、目的が明確でなければ、評価できません。たとえばアリはえさ場を見つけると、行列をつくって巣に持ち帰ります。そのとき、行列から抜け出してうろうろしているアリは、無駄な動きをしているように見えます。ですが、そのおかげで新たなえさ場を見つけたらどうでしょう。『運搬』という目的で考えれば無駄でも、集団の存続という目的に照らせば、新たなえさ場を見つけたことは決して無駄ではありません」

拡大する写真・図版西成活裕さん

 「同時に、『期間』を明確にすることも必要です。『それをいつまでに達成するのか』といった期間が明確でなければ『どんなことも、いつかは役に立つ』ということで、すべてのことが無駄ではなくなってしまいます。この二つがずれていると、無駄をめぐる対立が起きます」

――この「目的」と「期間」で企業などの無駄を分析してきたのですね。

 「100以上の企業で、コンサルタントとして、工場やオフィスでの人の動線の見直しや在庫の削減などにかかわってきました。企業の場合は、社長が『いつまでに何を達成する』と決めて、社員はその目標に向けて動く。意思統一さえされれば、比較的、無駄をなくしやすい構造です。特に、オーナー社長の企業では意思決定がスムーズで、うまくいきやすい傾向があります。視点を長期的に設定していて、ぶれずに進めます」

――同じ方法で、社会の無駄も減…

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